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イベントレポート


ZOZO組織開発担当に聞く、スタートアップが参考にすべきマネージャー採用・育成のポイント

投稿日:2022/6/14

更新日:2023/7/4

ZOZO組織開発担当に聞く、スタートアップが参考にすべきマネージャー採用・育成のポイント

2022年2月8日(火)に開催した「ZOZO組織開発担当に聞く、スタートアップが参考にすべきマネージャー採用・育成のポイント」では、株式会社ZOZO 技術本部 技術戦略部 組織開発 ブロック長 小金さまに以下の3つのテーマでご登壇いただきました。

  1. 小金さんの考えるマネージャーの役割

  2. スタートアップで直面するマネジメントの課題にどう向き合う

  3. スタートアップでいかにしてマネージャーを輩出するか?

このイベントでは、スタートアップのマネジメントに関する課題の解決策について明日から使えるヒントを得てもらうことを目的とし、開催されました。このイベントレポートも、明日からマネジメントの参考にしてもらえたら幸いです。

ゲスト
株式会社ZOZO
技術本部 技術戦略部 組織開発 ブロック長
小金 蔵人氏

1998年 味の素株式会社に入社、大阪・四国エリア営業を担当
2006年 ヤフー株式会社に転職、ビジネス開発・サービス企画・各種組織活性PJの推進 2016年 自らの希望で人事に異動、全社の人材開発・組織開発を担当
2020年 株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO)に転職 全社およびクリエイター部門の人事企画・HRBP・人材開発・組織開発を担当

モデレーター
株式会社フルート 代表取締役 菊池 裕太(以下:菊池)
株式会社HERP レベニューマネージャー 冨田 真吾(以下:冨田)

小金さんの考えるマネージャーの役割

冨田:まずは小金さんの考えるマネージャーの役割からお聞きできれば幸いです。そもそもマネジメントとは何かを教えて下さい。

小金:いろんなマネジメントがありますが、本日の参加者にはミドルマネージャーくらいの役職の方も多いと思いますが、ミドルマネジメントの役割は、社長の翻訳家と部署間の調整、部下のサポーターの3つを担うことかなと思います。

マネジメントスキルは、非常にポータブルなスキル(=環境に依存しないスキル)なので磨き込まれていれば、業界や会社が変わっても通用しますよね。マネジメントスキルが高ければ業務経験のない部門のマネジメントも可能だと思います。身につけるためには長い道のりが必要なので、今回のようなテーマに注目が集まるのかなと思います。

英語の「manage to」は「〜(なんとか)すること」と和訳されますが、実はこれが本質をついていて、結局「なんとかする」のがマネジメントではないかと思っています。

「Getting things done through others(他者を通じて成果を出す)」が、マネジメントをシンプルに表した言葉としてよく用いられています。自分ではなく、他者に動いてもらい、他者の成果を引き出し、評価されるようにするということですね。つまり、自分が動いたり、考えたりすることをどれだけ卒業できるかが、マネジメントのポイントであり、仕事だと思います。

またマネジメント論を語る上で、「マネジメントの父」と呼ばれるドラッカーは欠かせないと思うのですが、個人的に好きな定義が2つあります。1つ目は「人数以上の成果を生み出す組織を作り出す人」、もう1つが「短期と長期を同時に調和させて実現する人」です。

よくマネージャーに求められるスキルやマインドについて聞かれるのですが、以下のマネジメントマップの真ん中にある「責任感」や「リーダーシップ」、「学習能力」の3つと、メンバー向けスキルの「観察力」、会社向けスキルの「調整力」、最後にその周りにある「翻訳力」も大事なスキルです。

それぞれが独立しているとうまくはいかないですが、全てできる人はいないと思っています。得意なことから磨いていったり、役割分担したりして対応すれば良いと思います。

菊池:マネージャーって求められるスキルが多くて、あまりやりたくないっていう方が多いですよね。スタートアップのエンジニアで、ずっとプレイヤーでいたいとかマネジメントに興味がないって方はどうすべきなのでしょうか。

小金:明確な答えはないですが、マネジメントをしたくない人の気持ちはよくわかります。責任は重くなるのに、待遇はたいしてよくならないケースもありますし、昔なら率先垂範でやっていれば良かったものの、今は多様性が重視される時代なので複雑さは増すばかりですし。

上記のようなマネジメントに必要なスキルを見ると余計にマネージャーをやりたくないと思う人が出てくると思います。

マネージャーになることは目的ではなく手段なので、自分ひとりではできないことをしたくなった人しかマネージャーになるべきではないのかもしれません。厳しい言い方をするなら、管理職になりたくない人はならないほうが、組織のためだと思います。人を動かしてでもやりたいことがないとマネージャーは務まらないです。

冨田:HERP ではマネジメントされる必要がある人は、採用しない方針を掲げています。ただそれって、今回ご紹介いただいたマネジメントマップを見ると一義的な話しかしてないと思いました。HERP でマネジメントが必要だと思う人は、マネジメントマップの下半分のことだけを指していると感じました。

ドラッカーが言う短期と長期を調和して物事を実現するのがマネジメントであるというならば、マネジメントマップの上半分も必要な力だと感じました。

人数以上の成果を出すということについても、お互いのマネジメント力を発揮して成し遂げるといった考え方があると思います。そういう捉え方でマネジメントを考えてなかったなと小金さんの話を聞いてて発見がありました。

小金:「こういう人になってください。」となってしまうと難しいですね。マネジメントマップにある要素(≒スキル)を課長・部長・本部長で分担する方法もあれば、組織や企業のフェーズによってはすべてのマネジメント機能を必要としない可能性もあるので、必ずしも常に全ての要素を満たさなくても良いかもしれません。

冨田:たしかにそうですね。なので、スタートアップでこのマネジメントマップを眺めて考えるべきは、今置かれている状況で「コト」を成すときに、足りない要素がどこなのかを考えて、今のメンバーの中で強みを活かしあって、「ここは〇〇さんやってくれるよね」とか「ここは自分がやろう」とかを話し合えたらいいのかもしれませんね。

話は変わりますが、大企業とスタートアップでマネージャーに求められる役割は異なるのでしょうか?これまでのご経験から、求められる役割に法則性などがあれば教えていただきたいです。

小金:以下は、組織の人数規模と成熟度で成長のドライバーとなるものと、ドライバーの限界を表したグレイナーの組織成長モデルの図です。

第1段階の「創造性による成長」は、ビジョンやミッションに共感して集まり、「やろうぜ!」となっている段階です。この段階のどこかでリーダーシップが機能しなくなってくる局面を迎えます。

次の「指揮による成長」段階では、各マネージャーを置いて、組織を軍隊化するイメージです。指示による成長を経ると、徐々にメンバーの自主性が薄まるかなくなっていきます。

自主性が薄まるのを打破するために、第3段階では、権限移譲をおこない成長を促します。しかし、権限移譲をおこなった結果、コントロールが効きづらくなっていきます。そこで調整して成長を促すと、結果的に「形式主義の危機」を迎えます。これは稟議や根回しなどを以前よりも深く考えてしまう状態です。

最後の第5段階までくると、一人ひとりがリーダーシップを発揮して成果を生み出す「協働による成長」が求められ、実践されます。

企業規模やフェーズによって、求められることは異なりますが、スタートアップであれば比較的左側(第1から第3)を求められることが多くなってきます。特に黎明期だと、社長の翻訳家をできるかがすごく重要なんですよね。マネジメントマップでいうと、右上から左下に一気につなげるようなイメージですよね

一個一個の要素が解像度高く必要というよりか、各要素を手広くこなせる方がスタートアップのマネージャーには必要かもしれません。

ただ、ZOZOの場合でも、企業規模は約1,300人の会社なので、第5段階にいるべきですが、部署やチームによっては、第1段階の「リーダーシップの危機」なども起こってはいます。

冨田:そうですよね。一つひとつの組織で考える問題であって、会社全体が同じフェーズにいるわけではないですもんね。

小金:そのとおりで、こういった図説は多くのヒントをくれる一方で、全てを真に受けないことも重要です。半分は「そうだな」と思いつつ、半分は「でも本当かな」と一歩引いて考えると良いですね。少人数のスタートアップといっても、どの段階の危機も起こり得るので、大企業とスタートアップで明確に求められる役割が異なるとは言えないと思います。

冨田:私も組織の中にいる人間として、何かしらの危機は常に迎えていると感じています。何かの組織における意思決定をすると、今自分たちがどの状態に居るのかが意識できるのかなと思いましたね。

スタートアップで直面するマネジメントの課題にどう向き合う

冨田:では、続いてのトークテーマに移っていきます。「ロールモデルが存在せずに、あるべき姿が定義できない」や「プレイングが忙しく、マネジメントに注力できない」、「マネージャーを育てるための教育・研修・フィードバックの仕組みがない」などのスタートアップが向き合うマネジメントの課題についてお話を聞いていければと思います。

小金:こういった課題はスタートアップだけでなく、大企業でも起こり得ます。前職のヤフーは6,000人ほどの規模で、役職ごとの仕事の定義が口頭伝承のみで、明確には決まっていませんでした。しかし、それくらいの規模でもほっとけるし、ほっとけちゃうテーマでもあったんですよね。

また、スタートアップの採用って知り合い伝いに動き出すので、サークルっぽく始まり、部活っぽくなり、気づいたらプロ集団になっているみたいな流れですよね。その間にあるミドルマネジメントを定義するのが難しかったりするんですよね。

そのため、各社それぞれでマネージャーの定義をしてあげると良いかもしれません。ただそれが陳腐化するリスクもあるので、どれだけ意義があるかは悩ましいですね。

もう1つの「プレイングが忙しく、マネジメントに注力できない」については、過去に上司から言われた一言がまさにそうだなと思っています。

当時、上司に「マネジメントを頑張っているのに、なかなかメンバーが期待通りの成果をあげてくれないんですけど、どうすればいいですか」と相談をしました。そうすると、上司は「え?メンバーができないなら、あなたがやればいいじゃん。」と言われたんですよね(笑)。

上司からしたら、誰がやろうがチームで成果を出していればいいだけなんですよね。なにかマネジメント病のようなものにかかっていて、任せないといけないと思っていました。その結果、適度に成果を出す方向へ導きつつ、すぐメンバーにボールを返すようなやり方をしました。

結論として日本の組織では、マネジメント特化ではなく、良いプレイングマネージャーになる方が現実的だと思います。ただプレイングの割合が少なければ少ないほど、組織の成果はあがっていくという研究結果もあるらしいです。しかし、プレイングを減らさないようにと思いすぎないほうが良いとは思います。

冨田:菊池さんも同じ状況があると思いますが、具体的になにかやってきたことはありますか?

菊池:結局は小金さんも言っていた成果を出せてれば何でもいいというのが結論だとは思います。その上で、マネージャーの Do と Don't を定めることなのかなと思います。自社のマネジメントで「やってほしいこと」と「NG なこと」を定義づけるくらいが汎用性も高くマネジメントが機能していくのかなと思いますね。

小金:例えば Don’t(NG なこと)ってどんなことですか? 菊池:「メンバー個人の考え方を否定しない」とかですかね。当たり前ですが、意識しないと表に出る人も居るので。

小金:ありがとうございます。最後のテーマ「マネージャーを育てるための教育・研修・フィードバックの仕組みがない」については以下の図をまずはご覧ください。

マネージャーになったら、まず初めに 1on1 をやりましょうという会社も多いと思います。それはこの「経験学習サイクル」を回すためにも重要な取り組みだと思います。業務の振り返りをするために1on1をやっていると思うんですね。マネージャーからの一言がないと、振り返りを出来る人は少ないので問いかけてあげると良いでしょう。

マネジメントってやって初めて分かることや、やらないと分からないことが多いので、マネージャーこそが経験学習サイクルを回すことをすごく意識したほうが良いんですよね。起こったすべての行動を振り返って、そこから学びを得るサイクルをマネージャー自身が回せることがマネジメントスキル向上に繋がると思います。

良いマネジメントをされてきた人しか良いマネジメントができないと言われますが、1on1 も一緒で、良い 1on1 をしてもらった人しか良い 1on1 ができないと思うんですよね。なのでスタートアップだと階層が少ないと思うので、結局の所は社長がしっかりとした 1on1 をできているかが重要になってくると思います。

マネジメントや 1on1 に対して、社長や経営層が何か持論を持っていて、ミドルマネージャーに対して示せていることが大事なことですね。

冨田:社内の1on1 の品質を計測して高めるのは難しいことかと思いますが、重要性を高めて、上手く運用していく方法って何かありますか?

小金:あります。やはりフィードバックですね。マネージャーに対して1on1の質をフィードバックしてあげると良いでしょう。例えば組織サーベイの追加質問で部下に対して聞くとかですかね。「上司の1on1 に対して満足していますか。」や「どれくらいの頻度でやっていますか。」、「自分の内省に繋がる質問をしてくれていますか?」などが追加質問の例として挙げられます。

冨田:サーベイから始めるのは本当にいいですよね。

小金:サーベイ以外にも単純に1on1や日常のマネジメント自体のフィードバックを口頭含めてしてあげるのがいいですね。

スタートアップでいかにしてマネージャーを輩出するか?

冨田:ありがとうございます。それでは最後のトークテーマ「スタートアップでいかにしてマネージャーを輩出するか」に移ります。そもそも「採用するのか育成するのか」や「採用時のポイントは?」などをお聞きしたいです。

小金:スタートアップは採用も育成も頑張らなきゃいけないと思います。採用であれば組織にビルトインされるタイプの人が望ましいですよね。

初期であればミッションに共感してリファラルで来てくれる人が中心だと思いますが、規模が大きくなったときにエージェント経由などで来た人が本当にフィットするのかとかは危機としてあるのかなと。

経験のある人を採ることもあると思いますが、大事なのはその人が組織のためになる人かですよね。スキルを偏重して採るとすごく危ないことになる可能性もあります。そのため、内部でマネージャーを育てることも大事なんじゃないかと思います。

冨田:ミドルマネジメント不足だとなったときに、外部から採用なのか、内部から異動や抜擢するのかの判断基準はありますか?例えば、採用においての基準であったり…。

小金:ZOZO の場合は、ZOZOという会社が好きとかファッションが好きなどの価値観重視で、プラス経験やスキルを見て判断していました。逆にZOZO テクノロジーズというエンジニアやデザイナー部門であれば、一気にテック企業にならなければいけない使命があったので、どちらかというとスキル重視で価値観と半々くらいで採用していきましたね。

なので、経営者や組織体が求めている要件がどこにあるかによって変わってくるのかなと思います。

冨田:なるほど。それでは、組織が拡大しているフェーズでは、マネジメント不足かつ育成が間に合わない場合、採用は合理的な手段ということでしょうか?

小金:そうですね。ただ、個人の能力だけを見て採用するのは危ないなとは思いますね。組織の「力学」の中にマネジメントという「機能」を当て込むので、以下の図にある「チーム」や「コミュニティ」にその人が本当に合うのかは判断したいところではありますよね。

なので、「優秀な人」よりも「良い人」のほうが大事とZOZOでは言っています。ヤフーでも、ずるいやつを採るなと言っていたりしましたね。コミュニティをいいものにしていくかがポイントになっています。

冨田:反対に社内で抜擢するときの注意点などはありますか?

小金:制度や評価軸があれば、それに基づいて判断すべきだと思います。プラスで組織視点で見たときに、既存のマネージャーやメンバーとの相性も加味できるといいでしょう。成績の良さだけでマネージャーにあげると、上手く行かないケースがあるのはこういった相性の部分を考えてないからかもしれません。組織視点で考えて登用するのが良いと思います。

育成のフレームワークとして以下の図があります。マネジメントにも順番があるかなと思っています。観察や目標管理をしていく中で、人の価値観や強みや弱みがわかってきて、人材育成ができるようになります。そして一人ひとりの人材育成ができるから、その先の組織活性に繋がります。

1階の観察だけをやっているだけではなく、どんどん上にあがっていかなければ良いマネジメントにならないという概念を表す図になっています。

冨田:すごく分かりやすいですね、1階をすっとばして2階をやっている人や、1階だけやってマネジメントをやってる気になってしまうケースは多いですよね。

小金:そうなんですよね、それぞれの階で必要なことをやっていくことが本当に大事です。そのうえで一つ参考になるモデルとして、観察であれば「氷山モデル」や目標管理なら「MBO」や「OKR」、人材育成なら「経験学習サイクル」などを挙げています。

例えば「氷山モデル」であれば、目に見えている意見の裏側にある「経験」や「価値観」、「感情」までを観察することが重要ですね。

画像引用元:「認知の4点セット」|一般社団法人21世紀学び研究所 - OS21プログ 小金:そして組織活性は「GRPI(グリッピー)」という日本ではあまり紹介はされてませんが、僕がよく使うフレームを紹介したいと思います。GRPI は、自分の組織はもちろん、会社全体の組織開発でも使えるフレームになっています。

よく組織に一体感がないから、飲み会しようみたいな話しがあると思うんですが、GRPIで説明すると理解しやすいと思います。

みんなのGoal(目指すべきゴール)が明らかになっていないのに、一番下のInteraction(相互の関係性)である飲み会をやっても意味がないよねということなんですよね。

相互関係性でいえば、仲良くなればいいよねではなく、目指すゴールに向かうときに適した関係のことを指しています。

冨田:Interaction だけを重視してただ仲良くなればいいよねということではないということですね。

小金:そうですね。なので、チームビルドするときに、GRPI の内、自分が何を示せてないか、何を決められてないかを明らかにするとスムーズに進むと思います。Goal はあるけど上手く役割分担できていないなとかが見えてくると思います。

冨田:ありがとうございます。たしかに、役割分担次第ではコミュニケーションも最小限で済みますもんね。

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