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イベントレポート


適切なKPI設定、現場に発信をしてもらう仕組みづくり…採用広報の悩みにナイルの渡邉さんが回答

投稿日:2023/3/7

更新日:2023/7/14

適切なKPI設定、現場に発信をしてもらう仕組みづくり…採用広報の悩みにナイルの渡邉さんが回答

HERPユーザーコミュニティ主催で2023年2月7日(火)に実施したイベント、「採用広報ゼミ #1」。

本イベントでは、マーケティングDX事業、自動車産業DX事業を運営するナイル株式会社で、2018年から採用・広報を管轄する渡邉さんが、さまざまな企業の採用広報担当の悩みに回答しました。

採用広報全般の理論や一般的な話も交えつつ、具体的な悩みに合わせて回答頂いたことで、共感や新しいディスカッションが生まれとても満足度の高い回となりました。

本記事では合計7つのお悩みと、その回答を紹介します。

講師プロフィール
ナイル株式会社 カルチャーデザイン室
渡邉 慎平さん(以下:渡邉)
@spw63
慶應義塾大学卒業後、ナイル株式会社(当時ヴォラーレ株式会社)に新卒入社。300社以上のデジタルマーケティング支援に携わったのち、2018年5月に人事へ異動し、採用と広報を所管。現在はカルチャーデザイン室にて、オウンドメディア運営をはじめとする、採用広報と採用マーケティングを担当。

相談1:担当範囲はどこからどこまで?採用広報のスコープとは

質問者:少し前から採用広報に取り組み始めたばかりで、そもそも「採用広報ってなんだっけ」という状態です。採用広報の定義や、「採用広報でやることはこれとこれとこれ」というふうに、スコープが分かるとうれしいです。

渡邉:「広報」という字面だけを見ると、メディアに取り上げられたり、記事が拡散されたり…といったことを想起されがちだと思うのですが、個人的に考えているラインで言えば、求職者になる可能性のある方々とコミュニケーションをとり、そこから自社に入社して活躍してもらうまでが、採用広報の関わるスコープだと思っています。

転職の顕在層、例えば「今選考を受けています」とか「自社に興味があります」といった人ももちろんですが、それだけではなく将来的な候補者となり得る方々も含めてコミュニケーションをとるのが役割ですね。

まず会社の認知獲得、そこから応募してもらうための興味喚起、実際に自社を受けてもらうなかでの理解促進や懸念払拭、最終的に自社を選んでもらうといった各プロセスにおいて、適切な情報を用意し、求職者の方に訴求していくことが採用広報で取り組むことですね。

そのために、まずは自社の価値や求人の魅力を定義してコンテンツを作り、適切なタイミングに適切なチャネルで届けること。これが採用広報の仕事だと、私は思っています。

ブログでも動画でも、会社説明資料を作るのでも、手段はなんでもいい。他社がうまくやっているからという理由だけで手段に飛びついてしまわないことが大切ですね。参考までに、過去に「採用広報」と「採用マーケティング」の考え方について解説した記事を紹介します。

>>「採用広報」「採用狭報」「採用マーケティング」の思考で実践する、採用プロセスに応じた情報設計――マーケティング・広報の思考法で採用戦略をアップデートvol.2

以下の図は、「採用広報」と「採用狭報」、「採用マーケティング」の位置関係をまとめたものです。広報が拡散や露出を意味するのに対し、採用狭報は狭く伝える、つまり「N=1」の人に自社の魅力を伝えるもの。採用マーケティングはいわゆるWebマーケティング施策の取り組み…と考えるとわかりやすいですかね。

引用:オウンドメディアリクルーティングジャーナル

加えて、以下の図は認知獲得から内定承諾、入社意思決定までの流れの中で、各チャネルにおけるコンテンツや施策をまとめたものです。

オウンドメディアやブログについては、認知獲得に繋がるものもあれば、選考中の理解促進や最後2社で迷ったときの懸念払拭に繋がる記事など、内容によって役割が変わると思うので、それぞれのフェーズで役割を果たします。あくまで私の捉え方にはなりますが、参考にして頂ければと思います。

引用:オウンドメディアリクルーティングジャーナル

相談2:できることはやり切った…足りないのはサービス認知?

質問者:当社では専任担当がいないことに加え、期初に参加していなかったこともあり予算がほぼ使えない中で、Wantedlyやnoteで記事を書いたり、自前で動画を撮影してYouTubeにアップするなど、これまでにできる限りのことはやってきたつもりです。

その上で、今は「サービスの認知がないのがつらい」と思い始めてきていて…。事業広報のチームにも頑張ってもらったのですが、そちらでも一通りやり切ってもらったので、広報側で後は何をすればいいんだろう、と思っている状況です。

渡邉:サービス認知については、これがあれば解決するかでいうと一概にそうとも言えないというのが個人的な考えです。

そもそも、「企業認知」と「サービス認知」、そして「求職者認知」の重なりがどれぐらいあるかによって、企業認知やサービス認知が求職者認知にヒットするかどうかが変わると思うんです。

例えば、サービス名がそのまま企業名になっているような会社では「会社=サービス」のイメージが強くなりますよね。なので、企業認知やサービス認知を上げれば上げるほど、結果として求職者の方にもリーチできる可能性は高いかもしれません。

でも、例えば弊社の場合、デジタルマーケティング支援やWebメディア、カーリースなど複数サービスをやっているので、企業名とサービス名が直接的にリンクしない場合があります。ナイルは聞いたことがあるけど何をやっている会社かわからない。その逆で、サービスは知っているけど、どんな企業が運営しているかは知らない。要は、企業認知とサービス認知がイコールではないケースです。

それから、サービスの利用者が直接的な求職者になり得るのかも大事なポイントです。

例えば、弊社のデジタルマーケティング支援でいうと、SEOやコンテンツマーケティング支援をやっていて、採用対象もSEOなどの経験者なので、オウンドメディアやメルマガの読者の方がそのまま採用対象になります。なので、サービス認知を広げれば、結果として潜在的な採用対象者にリーチできる可能性があります。
一方で、カーリース事業の「定額カルモくん」の場合は、日本全国のマイカーを求めている方がお客様なのですが、その方々が直接的な採用対象というわけではありません。なので、サービス認知が上がったとしても、直接的に求職者の認知が高まるわけではないんですよね。

関連する話で、過去に「企業認知が採用力向上に効くのかどうか」のリサーチを実施したことがあるんです。半年間、コンテンツ制作やSNS発信などの施策を行い、その結果を調査しました。
結果、企業認知度自体は大きく変化がなかったものの、すでに弊社を知っている方で転職先として興味をもってくれた方は大きく数値が上がったという結果が得られました。
これは、届けたい相手を絞ってコンテンツ発信をしたひとつの成果と言えます。

つまるところ、企業認知やサービス認知を拡大することも、もちろん大事なことではありますが、「どの課題を解決するためのコンテンツなのか」を意識したアクションや、作ったコンテンツを用いてどうやってコミュニケーションを取っていくかなどを整理した方が、短期的な成果には繋がりやすいといえますね。

相談3:採用広報とコーポレート広報のすみ分けは?

質問者:私はもともとコーポレート広報として、リリース配信やニュースの更新、事業広報などをやっていたのですが、今期から採用力強化のために採用広報もやることになりました。ただ、設計の違いなどがコーポレート広報と採用広報、それから新卒採用・中途採用などであるのかどうかがいまいち分からず、質問させていただきたいです。

渡邉:採用広報とコーポレート広報のすみ分けでいうと、業務的に被るところは出てきます。ただ、「どちらが採用広報の音頭を取るのか」でいえば、採用責任を持っている人(部署)が最終決裁などの責任を持つべきだと個人的に思います。

企業広報や事業広報に取り組んでいる方は、「世の中の関心事と企業が提供できる情報をどうリンクさせるか」といった、より本質的なパブリック・リレーションズの考え方や、どうコンテンツとして見せていくべきか、媒体掲載に繋げていくのかを考えることには強みがあると思っていて。その視点ももちろん大切だけれども、採用広報においては、目の前の求職者の方にどう魅力を伝えていくのかという視点が必須なので、採用責任を持っている方が主導する方がズレが生まれづらいですよね。

もちろん、企業フェーズや広報体制、広報担当の方の持っているスキルセットによってもどちらが音頭をとったほうがいいかは変わると思うので、あくまで個人的な意見ですが。

もし、コーポレート広報や事業広報の方が採用広報についても責任を持つ場合は、採用面接などに同席し、求職者の方が何に困っているだとか、何を求めているのかといった観点の解像度を上げるアクションは一定必要だと思います。

相談4:適切なKPIの考え方を教えてください

質問者:これまで候補者対応に注力して採用広報はいわば片手間でやってきた状態です。ただ、なかなか認知が伸びないため、もう少し採用広報に注力していきたいと思っています。

今は「とりあえずやっておこう」という状態でも問題ないものの、今後新しい人が入ってきた際などにKPIなどがあった方がいいのではと考えており、採用広報にあたってのKPI設定について伺いたいです。

渡邉:採用広報におけるKPIをどうするべきかは会社の考え方やフェーズによって変わります。そもそも、採用広報やオウンドメディア運営がうまくいっているところは、KPIを置いていない印象です。

オウンドメディア運営については、ベイジさんと才流さんの対談記事で語られているKPIの考え方がとてもしっくりきたので、ぜひ皆さんにも読んで頂きたいです。結論、KPIや費用対効果は気にしておらず、やるべきだと考えているからやる。私も同じ考えですね。

参照)ベイジと才流が考える、コンテンツで得する会社と損する会社

とはいえ、採用広報の取り組み成果を社内で理解してもらったり、予算確保するために必要な場面もあると思うので、弊社の事例を紹介しておきますね。四半期や半期ごとに取り組むことの目標を決めて、それぞれにKPIを設定して取り組んできました。

2018年、オウンドメディアを立ち上げた当初は、「東大社長が起業した学生ベンチャー」「SEOの会社」といったイメージが強かったので、正しい理解促進を目標に「内定承諾率」と「応募後辞退率」を追っていました。

2019年ごろには、いわゆるWebマーケティングファネルの考え方で、「採用オウンドメディアに集客して、そこから採用サイトの求人エントリーに繋げる」という流れをトラッキングする仕組みを作りました。採用サイト経由で1名採用するために必要な数値を逆算してみたら、月100記事くらい作る必要があると分かって。これは現実的に無理だなと思って、Webマーケティング的な発想で逆算して目標設計するのは辞めました。

2021年には、先に述べた認知度調査を実施したり、広報スコアの考え方で「媒体力×露出パターン」で換算値を出して、そのポイントの目標達成を目指すといったことも試していましたね。このように、その時々の課題感にあわせて、予算を確保して色々挑戦したり、各施策に対する目標を決めて取り組んだりはしてきました。ただ、常時計測している採用広報のKPIというものは設けていないですね。

とはいえ、何かしら置きたいというケースもあると思うので、アクション数や露出数がわかる広報スコア、採用オウンドメディアのPV数やnoteの「スキ」数、採用サイトや求人のPV数、応募後の選考歩留まり率や内定承諾率など、企業の課題感にあわせて、社内で納得感を得られやすいものを指標として考えるのが良いのではないでしょうか。

質問者:ありがとうございます。お話を聞く中で、入社後に「自社のことをどこで知ったのか」といったアンケートを取ってみて決めるのもいいのかもと思いました。

渡邉:素晴らしいと思います。当社では最近、応募者アンケートを取っています。エントリーのタイミングで希望の働き方や人事目線で聞きたいところをヒアリングするフォームを入れているのですが、その中に「ナイルのことをどこで知りましたか」という項目も入れているんです。

こうしたアンケートの結果を受けて、広報のどのポイントを強めていけばいいかを考えるのも一つの手ですね。

相談5:SNSへの投稿って、何をしたらいい?

質問者:当社ではもともと僕が採用担当で、もう一人が広報担当という体制でやっていたのですが、今後は自分が採用広報も担当することになりました。

最近はSNSを頑張っていくべきなのかなと思っているものの、そもそもアカウントは会社の公式と個人アカウントどちらがいいのかや、どんな内容を投稿すればいいのかに悩んでいて、ネタ集めの方法なども含めて伺いたいと思っています。

渡邉:SNSに投稿する内容で言うと、届けたい相手がそのコンテンツを見て「いいな」と思うか、共感するかどうかがポイントだと思います。

例えば、私はサウナが好きなのでサウナのツイートをすることが多いのですが、それを見て「ナイルの渡邉さんと一緒に働きたい」とはならないですよね(笑)。

一方で以前、事業部メンバー発案で、「Twitter道場」という取り組みをしていたことがあります。そのなかでWebコンサルタントや編集者たちが業務に関する発信をしていたツイートを見てくれていた方が、1年越しで、エージェント経由で入社してくれたということがありました。

参照)社員のSNS発信が企業のファンを増やす。サービス受注や認知度向上につながった「Twitter道場」 | NYLE ARROWS

この事例を通じて、一番の採用広報コンテンツは、「社員が発信するリアルな内容」だと思いましたね。採用オウンドメディアのコンテンツって、取材して編集をいれたものになるので、求職者の方も多少その辺を差し引いて見ていると思うんです。やっぱり人事や広報の手が入ってない、社員の生の声が一番魅力が伝わるなぁと。

これまでの話を踏まえてSNSのアカウントをどうすべきかでいうと、企業アカウントではなく、個人でやった方がやはり魅力は伝わると思います。ただし、その人が離脱したときにフォロワーとの繋がりがなくなってしまうリスクはあると思うので、そこは会社判断になりますね。

質問者:なるほど。ネタ集めはどうされているんですか?

渡邉:ネタ集めに関しては、いくつかのメディアやブログをリスト化して、それを週1回巡回する時間を取っています。コンテンツの切り口でいうと、経営者の創業ヒストリー、会社のミッションやビジョンの話、社員のこれまでのキャリアや入社理由に関するインタビューなど、切り口がパターン化できるのでそれをストックして活用していますね。

相談6:発信の「谷間の時期」が不安で…

質問者:弊社ではnoteやブログなど、社員による発信に注力しているのですが、どうしても自発的に発信を継続してもらうのが難しいと感じています。

そこで定期的に社内キャンペーンを実施しているのですが、キャンペーン期間中は協力してくれても、それが終わると発信が絞られてしまうんです。なので、「ご褒美」的なものがなくとも発信を継続してもらうにはどうしたらいいかと悩んでいます。

渡邉:それで言うと、私が以前とあるスタートアップ広報の方の話を聞いて「なるほど」と思ったのが、「いつも全力で頑張らない」ということです。

常に発信し続けるのはしんどいし、ネタも枯渇してしまうので、例えば四半期に1回ぐらい、同時期に発信を集中させて、モメンタムを作るというのを意識的にやる。すると結果的にその時期に会社のさまざまなコンテンツに触れてもらえるので、そっちの方が印象に残るよねと。この話を聞いてから、会社全体の広報のやり方として意識するようにしました。

質問者:なるほど。方向性自体は図らずも今の弊社と近いんですね。僕らからすると、まさに今、記事発信が少ない時期は「谷間の時期」と感じてしまうのですが、皆さんからすると「露出が少ないな」という印象は特別持たないのでしょうか。

渡邉:もちろんアウトプットの情報にもよるかとは思いますが、特に転職潜在層の場合、常に特定企業の発信をチェックするという動きは考えにくいので、あまり気にしなくてもいいのかなとは思いますね。

質問者:谷間の時期があると忘れられてしまうのではないかという不安があったのですが、実はそんなことはないのですね。これまでにない視点を得ることができました。

相談7:メンバー全員で情報発信できる仕組みが知りたい!

質問者:現場メンバーの発信に力を入れたいと思っています。現場のメンバーが楽しく継続的に発信できるような仕組みを作りたいと思っているので、具体的な成功事例があれば教えていただきたいです。

渡邉:ナイルの場合はオンボーディングコンテンツの一貫として、研修でなぜナイルに入社したのかの理由や、働いてみてのギャップや魅力などを回答してもらい、その内容をもとに入社エントリーとして発信してもらうするという仕組みを作っています。

質問者:なるほど、入社研修に組み込むのはいいアイデアですね。ある程度コンテンツが溜まったら、一人歩きしてくれるかもとは期待しています。

渡邉:違う観点でアドバイスをすると、皆さん無意識で「常に新鮮なコンテンツを出し続けなければ」という強迫観念的なものを持っているかもしれませんが、コンテンツをリサイクルするというのも一つの手かなと。

例えば昔出した記事をキュレーションして載せるでもいいし、ツイッターで発信するでもいい。コンテンツの利活用の仕方はいろいろあると思うので、そちら側も考えてみてもいいかもしれないですね。

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