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採用ノウハウ


技術面接は"試験"ではなく"対話"。具体的な質問例と導入ステップ

投稿日:2025/12/17

更新日:2025/12/16

技術面接は"試験"ではなく"対話"。具体的な質問例と導入ステップ

技術面接といえば、候補者の技術力を測る場というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。もちろんそれは間違っていませんが、それだけだと思っていると、大事なことを見落とします。

優秀なエンジニアほど、転職先として複数の選択肢を持っています。面接を受けながら、「この会社で働きたいか」を同時に判断しています。そして、その判断材料になるのは、求人票に書かれた待遇や技術スタックだけではありません。面接でどんな会話ができたかが意外と大きいのです。

「試されている感じがした」と思われるか、「この人たちと働いたら面白そう」と思ってもらえるか。技術面接は、候補者を選ぶ場であると同時に、候補者から選ばれる場でもあります。

この記事では、技術面接を"試験"から"対話"に変えるための考え方と、具体的な質問例を紹介します。


なぜHERPがこの記事を書くのか

本題に入る前に、私たちがこのテーマについて発信する理由をお伝えさせてください。

HERPは「スクラム採用」という考え方を提唱しています。採用を人事だけの仕事にせず、現場を巻き込んで全社で取り組むアプローチを広めるために、採用管理システムの提供や情報発信を行っています。

エンジニア採用において、現場エンジニアが面接官を務めるのは一般的になっています。しかし、「巻き込む」と「丸投げする」は違います。この2点を混同している企業は少なくありません。

現場エンジニアに面接を任せ、人事はスケジュール調整だけで行い、面接で何が起きているのかを把握しておらず、面接官へのフィードバックもない状態では「巻き込んでいる」とは言えません。

技術面接を「試験」から「対話」に変えるには、面接官個人の意識だけでなく、人事と現場の連携が必要になります。だからこそ、スクラム採用を提唱する私たちがこのテーマを扱う意味があると考えています。


なぜ技術面接は"試験"になりがちなのか

採用側の視点だけで設計されている

技術面接を設計するとき、まず「何を見極めたいか」から考えるのは自然なことです。コーディング力、設計思想、技術的な意思決定の経験、コミュニケーション力といった見たい項目をリストアップして、それぞれを確認できる質問を用意します。

このアプローチ自体は間違っていません。ただ、このやり方だけで進めると、どうしても「採用側の視点」に偏ります。候補者がその面接をどう体験するか、という視点が抜け落ちやすいです。

結果として、面接は「チェックリストを消化する場」になりがちです。質問して、回答を聞いて、評価シートに記入する方法は効率的ではありますが、候補者からすると「機械的に処理されている」ような冷たい印象を受けることもあります。

面接官が「正解を持っている前提」で進む

技術面接でよく見られるのが、「この質問に正しく答えられるか」を見るスタンスです。

例えば、特定のアルゴリズムの計算量を聞いたり、設計パターンの名称を答えさせたりする質問が挙げられます。もちろん、一定の知識レベルを確認すること自体は必要なプロセスでしょう。

しかし、面接全体がこうした一問一答形式ばかりになってしまうと、候補者は対話というよりも「一方的に試されている」という印象を抱きやすくなります。

試されていると感じた人は、正解を探そうとして無難な回答を選んでしまう傾向にあります。本来持っている思考の深さや、その人らしい判断軸が見えにくくなります。

面接官が「正解を知っていて、それを当てさせる」という構図になった瞬間、その場は「対話」から単なる「試験」へと変わってしまいます。


優秀なエンジニアは「面接の会話」で入社を決める

選考は相互評価の場である

採用市場、とくにエンジニア採用においては、候補者が複数の企業を比較検討しているケースが珍しくありません。

つまり、選考は「企業が候補者を評価する場」であると同時に、「候補者が企業を評価する場」でもあります。求人票には書かれていない情報を、面接で見極めているのです。

面接で「一緒に働くイメージ」が持てるかどうか

候補者が入社を決める要因はさまざまですが、「面接で話した人と一緒に働きたいと思えたか」は想像以上に大きなウェイトを占めます。これは、質問の内容だけでは決まりません。むしろ、会話の進め方や深め方に本音が出ます。

自分の回答に対してどのような反応が返ってくるか、深く突っ込んだ質問は単なる追及なのか、それとも純粋な興味からくるものなのか。また、こちらからの質問に対してどれだけオープンに答えてくれるか。

候補者は、こうした細かいやり取りの積み重ねによって、「この会社で働くイメージ」を具体的に作り上げていくものです。

面接が終わったあとに「あの人たちと議論したら面白そうだな」と思ってもらえたら、それは大きなアドバンテージです。逆に、「なんか一方的に質問されて終わったな」という印象を残してしまったら、他社との比較で不利になります。


"対話型"技術面接をつくるための2つの視点

では、技術面接を"試験"から"対話"に変えるには、どうすればいいのでしょうか。ここでは3つの視点を紹介します。

①「正解を当てさせる」から「考え方を聞く」へ

まず意識したいのは、「答えそのもの」よりも「なぜその答えに至ったか」を聞くことです。

たとえば、技術選定の経験を聞くとき。「〇〇というフレームワークを使った理由は?」と聞いて、「パフォーマンスが良いからです」という回答が返ってきたとします。ここで終わらせるのではなく、検討した他の選択肢やチーム内での議論など、その結論に至るまでの背景についてさらに掘り下げていきます。

この掘り下げ方で、候補者の思考の深さが見えてきます。同時に、候補者も「自分の考えをちゃんと聞いてもらえた」という感覚を持てます。

正解を当てさせるのではなく、候補者の頭の中を一緒に覗かせてもらうというスタンスの違いが、面接の質を大きく変えます。

掘り下げの技術:3つの方向

候補者の回答を掘り下げるとき、以下の3つの方向を意識すると対話が深まります。

  1. 水平に広げる:「他にはどんな選択肢がありましたか?」「似たような経験は他にもありますか?」

  2. 垂直に深める:「なぜそう判断したのですか?」「その結果、何が起きましたか?」

  3. 仮定で問いかける:「もし時間に余裕があったら、どうしていましたか?」「今振り返ると、違う判断をしますか?」

とくに3つ目の「仮定で揺さぶる」は、候補者の思考の柔軟性や、経験からの学びを見るのに有効です。ただし、詰問にならないよう、「純粋に興味がある」というトーンで聞くことが大切です。

②面接官自身も"開示"する

候補者にオープンに話してもらいたいなら、面接官もオープンでなければフェアではありません。自社の技術的な課題や、チームの現状について、うまくいっていることだけでなく、まだ解決できていないことも含めて話しましょう。「正直、ここはまだ整備できていなくて」や「この領域は強い人が足りていない」等、リアルな話ができると、候補者の信頼を得やすくなります。

また、面接官自身のキャリアや、なぜこの会社にいるのかを語ることも有効です。候補者は「この会社はどんな人が働いているのか」を知りたがっています。面接官が自分の言葉で語れると、それだけで「この会社の雰囲気」が伝わります。

隠し事をせず、良いところも課題も含めて見せる姿勢が、候補者にとっては「信頼できる会社かどうか」の判断材料になります。

開示の具体例:面接官が語るべき5つのこと

「面接官が自己開示するといっても、何を話せばいいかわからない」という声をよく聞きます。以下の5つを参考にしてください。

  1. 今、何に取り組んでいるか:直近で担当しているプロジェクトや技術的なチャレンジ

  2. なぜこの会社を選んだか:入社の決め手となったこと。中途入社のメンバーは前職との違いも

  3. チームの雰囲気:どんなコミュニケーションスタイルか、意思決定はどう行われるか

  4. 正直に困っていること:技術的負債、人が足りない領域、まだ解決できていない課題

  5. この採用で期待していること:なぜこのポジションを募集しているのか、入社後に期待すること

とくに4と5は、候補者が「入社後の自分」をイメージするのに役立ちます。課題を正直に話すことで、「この会社は誠実だ」という印象にもつながります。


対話型面接で使える質問例(実践編)

ここからは、対話型の技術面接で使いやすい質問例を紹介します。「正解」を求めるのではなく、候補者の考え方や価値観を引き出すことを意識した質問です。

思考プロセスを引き出す質問

  • 「過去に技術選定で迷った経験と、その時どう判断したか教えてください」

  • 何を重視して意思決定するかが見える。トレードオフの捉え方もわかる。

  • 「設計で妥協した経験はありますか?何を優先しましたか?」

  • 現実の制約の中でどう判断するかを聞ける。完璧主義か、現実主義か。

  • 「コードレビューで指摘することが多いポイントは何ですか?」

  • 技術的なこだわりや、チームでの働き方が垣間見える。

  • 「過去に『これは失敗だった』と思う技術的な判断はありますか?」

  • 失敗を認められるか、そこから何を学んだかを聞ける。

カルチャーフィットを見る質問

  • 「チームで意見が割れたとき、どう進めることが多いですか?」

  • 合意形成のスタイルがわかる。自社のカルチャーとの相性を見やすい。

  • 「今のチームで"もっとこうしたい"と思っていることはありますか?」

  • 現状への課題意識や、改善への意欲が見える。

  • 「どんなチームだと自分のパフォーマンスが出やすいと思いますか?」

  • 自己理解の深さと、環境との相性を確認できる。

候補者の関心を引き出す質問

  • 「今日の面接で聞いておきたいことはありますか?途中でも遠慮なくどうぞ」

  • 面接の序盤で伝えておくと、双方向の空気をつくりやすい。

  • 「次の環境に求めていることを教えてください」

  • 転職の軸がわかる。自社で提供できるかどうかの判断材料になる。

  • 「今日話した内容で、もう少し詳しく聞きたいことはありますか?」

  • 面接の終盤で、候補者の関心を拾う。


技術面接の質を「測る」方法

ここからは、より実践的な話に踏み込みます。

「面接の質を上げよう」と言っても、具体的に何をもって「質が高い」と判断するのかは難しいものです。どうしても感覚的な評価になってしまいがちだからです。 そのため、できる範囲で客観的な指標を持っておくことが大切です。

私たちがクライアント企業と一緒に取り組んでいる方法をいくつか紹介します。

候補者アンケートで「面接体験」を可視化する

面接後に候補者へ簡単なアンケートを送る方法です。以下のような項目で、面接体験を定量化できます。

  • 面接官の話を聞く姿勢はどうでしたか?(5段階)

  • 自分の考えを十分に伝えられましたか?(5段階)

  • 会社やチームの雰囲気は伝わりましたか?(5段階)

  • 面接を通じて、入社意欲は上がりましたか/下がりましたか?(上がった・変わらない・下がった)

  • 面接で印象に残ったことがあれば教えてください(自由記述)

とくに「入社意欲の変化」は重要な指標です。面接を受ける前と後で、候補者の意欲がどう変化したか。これが継続的にマイナスであれば、面接のやり方に問題がある可能性が高いです。

面接官ごとの「通過後辞退率」を追う

少し踏み込んだ指標として、面接官ごとの「通過後辞退率」を追う方法があります。

ある面接官が担当した候補者が、その面接を通過した後にどれくらいの割合で辞退しているか。この数字が特定の面接官で高い場合、面接体験に課題がある可能性があります。

もちろん、辞退の理由は面接だけではありません。しかし、この指標を追うことで「面接の質を意識する文化」が生まれます。

面接の録画・振り返りを行う

候補者の同意を得た上で、面接を録画し、後から振り返る方法です。

面接官自身が自分の面接を見返すのは、かなり学びが多いものです。「自分はこんなに話を遮っていたのか」「もっと掘り下げられたのに、次の質問に行ってしまった」など、客観的に気づけることがあります。

また、人事や他の面接官と一緒に録画を見て、フィードバックし合う機会を設けると、組織全体の面接スキルが底上げされます。


人事担当者へ:現場エンジニアを「面接官」として育てる方法

最後に、この記事を読んでいる人事担当者に向けて、具体的な提案をさせてください。

技術面接の質を上げようとするとき、「面接官のトレーニング」という話になりがちです。もちろんそれは大事です。しかし、多くの企業でトレーニングがうまくいかないのは、「面接官を孤立させている」ことが原因だと私たちは考えています。

エンジニアに「面接官やってください」とお願いして、評価シートを渡して、あとは任せてしまうと、面接官は何を目指せばいいのかわかりません。

必要なのは、人事と現場エンジニアが「採用チーム」として連携することです。以下のステップを参考にしてください。

ステップ1:面接の目的と評価基準を一緒に設計する

「この面接で何を見極めるのか」「どんな候補者体験を届けるのか」を、人事と現場エンジニアで一緒に言語化します。

評価項目を決めるときも、人事が一方的に決めるのではなく、現場の意見を聞きながら作ります。「こういう人と働きたい」「この経験は必須、これはあれば嬉しい」といった現場の肌感覚を、評価基準に落とし込むプロセスです。

ステップ2:面接のロールプレイを行う

評価基準を作っただけでは、面接の質は上がりません。実際に練習する機会を設けましょう。

新しく面接官になる人には、まずロールプレイで練習してもらい、経験のある面接官が候補者役をやり、フィードバックを返しましょう。これだけで、初めての面接に臨むときの不安はかなり軽減されます。

ステップ3:面接後の振り返りを定例化する

面接が終わった後に、人事と面接官で振り返りを行う時間を作ります。

「今日の候補者はどうだったか」だけでなく、「面接自体がうまくいったか」も振り返りましょう。候補者アンケートの結果を共有したり、「あの質問は良かった」「ここはもっと掘り下げられたかも」といったフィードバックをし合ったりすることが効果的です。

この振り返りを続けることで、面接官同士で知見が共有され、組織全体の面接スキルが上がっていきます。

ステップ4:面接官を「評価する側」から「採用チームの一員」へ

面接官の役割を「候補者の評価」だけに限定してしまうと、実際の面接もどうしても「試験」のような堅苦しい雰囲気になりがちです。

単に評価するだけでなく、候補者と自社の相性を確かめつつ、会社の魅力も伝える役割があるという認識をチーム内で合わせることが重要です。

そのためには、面接を担当するメンバーに対して、採用活動の全体像を共有しておく必要があります。具体的には、今回の募集背景やターゲットとなる人物像、また競合他社の状況といった情報です。こうした背景を事前に伝えておくことで、面接官も当事者意識を持って選考に関われるようになるはずです。


まとめ

技術面接を単なる「試験」ではなく「対話」の場として捉え直すことで、候補者に与える印象が良い方向へ変わる可能性があります。

具体的には、正解を答えさせることよりも思考のプロセスを聞き出したり、一方的な質問を避けて双方向のコミュニケーションを意識したりといった工夫が有効です。その際、面接官自身が情報をオープンに話す姿勢も大切です。

手法そのものはシンプルですが、実際にこれらを徹底できている企業は多くありません。

また、面接の質を高めるには、面接官個人のスキルアップだけでは限界があります。人事と現場エンジニアが連携して採用チームを作り、面接の設計から振り返りまでを共に行う。そうした体制を整えることで、より実りある面接が可能になると考えられます。

優秀なエンジニアほど、選ばれるだけでなく選んでいます。面接は、候補者を評価する場であると同時に、自社の採用力を示す場でもあります。

「あの会社の面接、すごく良かったんだよね」

候補者にそう言ってもらえる面接を、つくっていきましょう。

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