
投稿日:2026/8/14
更新日:2026/8/14
近年、「アルムナイ採用」を導入する企業が急増しています。中途採用市場の競争が激化し、母集団形成そのものが難しくなるなか、すでに自社を知る退職者にアプローチする手法は、コストと確度の両面で注目を集めています。
しかし、アルムナイ採用は単に制度を設けるだけでは機能しません。現場の社員と人事が一体となり、退職者との継続的な関係性を築く体制づくりが不可欠です。制度だけを整えても、現場を巻き込めなければ形骸化してしまいます。
本記事では、アルムナイ採用の基本的な意味から類似制度との違い、メリット・デメリット、導入時のポイントまで分かりやすく解説します。
アルムナイ採用は、退職者を「関係の切れた過去の社員」ではなく「将来の即戦力候補」として捉え直す採用手法です。カムバック採用・リファラル採用・ジョブリターン制度といった類似制度とは対象範囲が異なり、退職者との長期的な関係構築を重視する重要な施策といえます。
即戦力の確保やコスト削減、企業ブランディングといったメリットがある一方で、既存社員との公平性やスキルギャップといったリスクにも目を向ける必要があります。
まずは自社の退職者データの棚卸しや退職時コミュニケーションの見直しから始め、現場と人事が連携した持続可能なアルムナイ運用の第一歩を踏み出しましょう。

アルムナイ採用とは、自社を退職した人材(アルムナイ)に対して、再雇用や業務委託などの形で再びアプローチする採用手法です。単なる「出戻り採用」にとどまらず、退職者との継続的な関係を採用活動にも生かす点が特徴です。
「アルムナイ(Alumni)」とは本来「卒業生」「同窓生」を意味する言葉です。もともとは大学の同窓会組織などを指す用語でしたが、人事領域に転用され、現在では「企業の退職者・OB/OG」を表す言葉として広く定着しています。アルムナイ採用とは、一度自社を離れた人材を「同窓生」のようなゆるやかなつながりのある存在として位置づけ、再び雇用や契約という形で関わりを持つ採用手法です。
アルムナイ採用では、正社員としての再入社だけを対象としているわけではありません。業務委託やアドバイザー契約、副業といった多様な関わり方を含むため、退職者との接点を維持しやすくなります。退職を「関係の終了」ではなく「新たな関わりのスタート」と捉え直し、柔軟な接点を設計できる点に、この制度の本質的な価値があります。
アルムナイ採用は、「カムバック採用」「リファラル採用」「ジョブリターン制度」と混同されやすい制度です。それぞれ対象者や目的が異なるため、違いを整理しておくことで、自社に適した制度を選びやすくなります。
以下の表で全体像を押さえましょう。
制度 | 対象者 | 主な目的 |
アルムナイ採用 | すべての退職者(再入社に限らない) | 幅広い関わり方でのネットワーク構築 |
カムバック採用 | 再入社(正社員復帰)を前提とした退職者 | 正社員としての復職 |
リファラル採用 | 現役社員の友人・知人 | 社員紹介による母集団形成 |
ジョブリターン制度 | やむを得ない理由で退職した人 | 復職支援 |
カムバック採用は「対象が再入社(正社員復帰)に限られる」という点で、アルムナイ採用とは異なります。
カムバック採用は、将来的な「再入社(正社員としての復帰)」を前提とした退職者を対象とする制度です。一方、アルムナイ採用は再入社を前提とせず、すべての退職者を広く対象とします。正社員雇用に限らず、業務委託や副業など柔軟な関わり方を含む点が特徴です。
カムバック採用が「復職を前提とした制度」であるのに対し、アルムナイ採用は「関係構築を前提とした枠組み」だと捉えると整理しやすくなります。
リファラル採用は「現役社員の知人」を対象とする点で、元社員を対象とするアルムナイ採用と異なります。
リファラル採用は「現役社員」の友人や知人を紹介してもらう手法です。一方、アルムナイ採用は「元社員(退職者本人)」を直接の対象とします。
なお、退職者本人から知人を紹介してもらう「アルムナイ経由のリファラル採用」という派生形も存在します。両者を組み合わせて運用する企業もあります。
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ジョブリターン制度は「やむを得ない退職者の復職支援」ですが、アルムナイ採用は「退職理由を問わない、広いネットワーク構築」を目指します。
ジョブリターン制度は、育児・介護・配偶者の転勤といった「やむを得ない理由で退職した社員」の復職支援を主目的とした制度です。アルムナイ採用は、キャリアアップや転職など「前向きな理由で退職した人」も含め、退職理由を問わず広くネットワークを構築します。
アルムナイ採用は、退職者との長期的な関係構築を重視する包括的な考え方です。企業によっては、カムバック採用やジョブリターン制度と組み合わせて運用されるケースもあります。すでにリファラル採用やジョブリターン制度を運用している場合でも、「アルムナイ」という包括的な視点を取り入れることで、既存制度のポテンシャルを最大限に引き出せます。

アルムナイ採用を導入すると、「採用の質」「コスト」「企業ブランディング」の3つの側面で効果が期待できます。
自社の業務やカルチャーをすでに理解しているため、即戦力として早期に活躍しやすくなります。
アルムナイ人材は、自社の事業内容や社内システム、独自のルールをすでに理解しており、組織文化にもスムーズになじみます。一般的な中途採用に比べてオンボーディング期間を大幅に短縮でき、入社直後から高いパフォーマンスを発揮します。
特に、かつて同じ部署で働いていたメンバーが人柄やスキルを把握したうえでアプローチできるため、非常に高いマッチング精度を実現できます。「採用してみないとわからない」というミスマッチのリスクを抑えられる点は、アルムナイ採用ならではのメリットです。
採用単価と入社後の教育コストを同時に削減できる点も、大きなメリットです。
アルムナイ採用は、コスト面でも大きな経営メリットをもたらします。人材紹介会社を介さないダイレクトな手法であるため、通常発生する年収の約3割にも及ぶ紹介手数料を大幅にカット可能です。さらに、自社の文化や業務プロセスを既に熟知している人材であれば、入社後のオンボーディングや教育に割く手間も最小限に抑えられるため、実質的なコスト削減効果はより一層高まります。
さらに、退職前から現場の社員が良好な関係を築いておけば、退職後も「外部の協力者」としてゆるやかなつながりを保ちやすくなります。こうした日頃の関係づくりが、自然な母集団形成の土台になります。
退職者の再入社実績は、企業文化や労働環境の良さを外部に証明する強力な根拠となります。
一度他社を経験した人材に『再び選ばれる会社』としての実績は、外部の求職者に対する企業ブランディング を強力に高めます。
人事からの広報だけでなく、現場社員が元同僚に『また一緒に働こう』と声を掛け合える風土自体が、魅力的な企業カルチャーの証明となります。元社員の実体験を伴った魅力の発信は、一般的な求人票以上に、求職者の意思決定を強力に後押しします。

メリットが大きい反面、アルムナイ採用には設計を誤ると現場に軋轢を生むリスクもあります。導入前に押さえておくべき3つの注意点を解説します。
再雇用時の待遇や給与設定によっては、現役社員との間に軋轢や不公平感を生むリスクがあります。
再雇用時の給与やポジションが、ずっと自社に残って貢献してきた現役社員より高い場合、不満が出やすくなります。また「一度退職した人」に対して感情的な反発を抱く社員もいるため、社内に不公平感が広がらないよう注意が必要です。
人事だけの判断で待遇を決めるのではなく、現場を巻き込んだ透明性のあるプロセスが求められます。この点を軽視すると、再雇用が既存社員の不満や離職リスクを高める逆効果となる恐れがあります。
「いつでも戻れる」という認識が、現役社員の安易な離職を助長しかねません。
アルムナイ制度が充実していると「いつでも復帰できる」という認識が社内に広まり、安易な離職を招くリスクが生じます。
この懸念に対しては、人事の制度だけでなく、社内カルチャーの醸成も欠かせません。現場のマネージャーが「他社でスキルを磨いて、もし自社に戻ってくる選択肢が生まれたら、いつでも歓迎する」と前向きに送り出す雰囲気を整えましょう。
過去の評価に依存すると入社後にミスマッチが生じるため、再選考は慎重に行う必要があります。
「かつて自社で活躍していた」という過去の印象だけで再雇用を判断すると、入社後のミスマッチにつながるリスクがあります。退職期間中に本人のスキルやマインドが変化していたり、自社の事業フェーズが変わっていたりすると、ミスマッチが起きやすくなります。
受け入れ先の現場社員がカジュアル面談などを通じて「現在のリアルなスキルやマインド」を事前に把握し、ミスマッチを未然に防止しましょう。

デメリットを踏まえると、アルムナイ採用の成否は「社内周知」と「基準の明確化」という2つの準備にかかっています。
既存社員との摩擦を防ぐには、制度の導入目的を事前に社内へ丁寧に説明・周知することが不可欠です。
その際、人事から一方的に説明するだけでなく、現場からの意見や懸念を事前にヒアリングし、制度設計に反映させるプロセスも欠かせません。あわせて給与・待遇の決定プロセスを透明化し、既存の評価制度と連動させた不公平感のない仕組みを整えましょう。
制度の構築にとどまらず、運用体制まで設計することが成功のカギです。参考になるのが「スクラム採用」という考え方です。スクラム採用とは、採用活動を人事だけに閉じず、現場社員も巻き込みながら全社一丸となって進める手法を指します。この考え方をアルムナイ採用に応用し、現場社員が退職者と良好な関係を保ち、人事が制度・待遇面でバックアップする体制を、本記事では「スクラム・アルムナイ採用」と呼びます。
人事主導の制度だけに頼らず、こうした現場を巻き込んだ運用体制を整えましょう。
関連記事:『 HERPで実現するスクラム採用』の資料ダウンロード
「誰でも戻れるわけではない」という復職条件や選考基準の明確化が求められます。
復職の条件や選考基準が曖昧なままだと、「多少準備不足でも、また戻ればいい」と社員に思わせてしまい、安易な離職を後押ししかねません。基準を明確かつ厳格に運用することで、こうした認識の広がりを防ぎ、選考プロセスそのものへの信頼も保てます。
その際は、現場の「一緒に働きたい」という視点と、人事の等級・給与などの基準をすり合わせることが重要です。両者の視点を反映することで、既存社員も納得しやすい基準を設計できます。

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