
投稿日:2025/12/24
更新日:2025/12/23
新卒採用の早期化傾向は年々強まっており、大学3年の夏時点で内々定を出す企業も珍しくなくなってきました。同時に、学生の意識も変化し、以前のような「どの会社に入るか」という基準から、「何の仕事をするか」を重視して就職先を選ぶ傾向が見られます。
こうした背景から、近年注目を集めているのが「職種別採用」と「長期インターン」を組み合わせた採用設計です。
私たちHERPは「スクラム採用」を提唱し、多くの企業と共に現場主導の採用活動を実践してきました。その経験からこの「職種別採用×長期インターン」という手法が単なる流行ではなく、新卒領域においてスクラム採用を実現するための有効な手段になりうると考えています。
本記事では、なぜ今この組み合わせが効果的なのか、また具体的にどのように設計・判断すればよいのかについて、実際の現場で得た知見をもとに解説します。
本題に入る前に、なぜHERPがこのテーマについて解説するのか、その背景についてまずお伝えします。
私たちは2017年の創業以来、採用管理システム(ATS)を通じて企業の採用活動を支援してきました。そこで一貫して推奨しているのが「スクラム採用」という手法です。
「スクラム採用」とは、採用を人事だけの仕事にするのではなく、現場メンバーが主体的に関わるあり方を指します。人事がプロセス全体をリードしながら、母集団形成から選考、クロージングまで現場を巻き込み、「誰と一緒に働くか」を現場メンバー自身が決めるスタイルです。
一般的に中途採用で語られることの多い概念ですが、新卒採用においても有効だと考えています。そして、新卒領域でこれを実現するための有力な手段となるのが、「職種別採用」と「長期インターン」の掛け合わせです。
HERP自身もこのフローでの採用実績がありますし、支援先のスタートアップやベンチャー企業でも成果が出始めています。本記事では、こうした現場の実践から得られた知見を、具体的にお伝えできればと思います。
(参考:スクラム採用とは)
リクルート就職みらい研究所の調査によると、2025年卒では3月1日時点で内々定率が34.3%に達し、前年から16.2ポイントも増加しました。卒業年次の6月1日が「選考解禁日」とされているにもかかわらず、実態としては大学3年の段階で採用活動が本格化しています。
企業側も「他社より早く」を意識せざるを得ない状況です。マイナビの調査では、2025年卒のインターンシップ実施率は61.3%と過去最高を記録しました。採用充足率は70.0%で過去最低水準となり、人材獲得競争は年々激しさを増しています。また、2018年の経団連の指針廃止など、インターンシップの取り扱いの変化の三省合意なども背景にあります。(参考:https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220613002/20220613002.html)
従来の「3月解禁→6月選考→10月内定」という一括採用モデルは、徐々に薄まりつつある傾向です。
学生の意識も変わってきています。
ヒューマネージ社の調査(2024年卒対象)によると、約6割の企業が「職種別採用」を実施しており、すべて職種別で採用する企業は約4割に達しています。この背景には、学生側の「配属ガチャを避けたい」というニーズがあります。
「どの会社か」より「何をするか」という志向は、早期から就職活動を始める「就活に対して意識の高い層」で顕著です。総合職として入社し、人事の判断で配属先が決まる従来型のモデルに対して、違和感を持つ学生が増えています。
『就職白書2025』によると、長期インターンの参加率は全体の3.0%程度にとどまっており、全体としてはまだ少数派です。
ただ、東京大学や早慶上智といったいわゆる上位校の学生に限ると8.5%に上るというデータもあり、就職活動への意識が高い学生層ほど、長期インターンを選択肢に入れている傾向がうかがえます。
また、2025年卒からインターンシップの定義が改正され、5日間以上のプログラムであれば、そこで得た学生情報を採用活動に直接利用できるようになりました。これにより、長期インターンから早期選考を経て内定へつなげるルートが、制度上もスムーズに運用できるようになりました。
いわゆる「総合職採用」には、構造的な課題が存在します。「汎用性の高い人材を採用し、入社後の適性を見極めて配属する」というモデルは、企業側にとっては柔軟性がある反面、学生側との期待値にズレが生じやすい側面もあります。
例えば、入社前に営業職を希望していた学生が経理に配属されたり、企画職を志望していたにもかかわらず現場研修が長期化したりといったケースです。こうした配属のミスマッチは、結果として早期離職やモチベーションの低下を招く要因となりかねません。
マイナビの調査でも、入社4年目の時点で「5割以上の社員が退職している」企業が17.5%にのぼるというデータも出ています。
すべての退職理由が配属のミスマッチにあるわけではありませんが、入社前の期待と実際の業務内容とのギャップが、離職を引き起こす要因の一つになっていることが伺えます。
「誰と一緒に働くか」という決定プロセスに現場が関与できない採用は、結果としてうまくいかないケースが少なくありません。
総合職採用における課題は、学生側のミスマッチだけにとどまりません。受け入れる現場側にとっても、「人事が決めた人材が配属されてくる」という受け身の構造では、どうしても採用に対する当事者意識を持ちにくくなってしまうからです。
職種別採用を導入することは、こうした構造的な課題を解決する有効な手段となります。主なメリットは以下の3点です。
① 現場が「自分のチームに入る人」を選べる
職種を限定することで、選考プロセスに現場社員を巻き込みやすくなります。エンジニア採用ならエンジニアが、営業なら営業が面接を担当し、「この人と一緒に働きたいか」を現場目線で判断できます。
中途採用ではよく行われることですが、新卒採用においてもこのプロセスを取り入れることで、配属後の納得感を高めることができます。
② 候補者の解像度が上がる(自己選択が進む)
「エンジニア職」「セールス職」など、職種を明示して募集することで、学生自身が自分のキャリアを具体的にイメージしやすくなります。
「なんとなくこの会社が良い」という曖昧な志望動機から、「この仕事がしたいからこの会社を選ぶ」という明確な動機へと変わり、ミスマッチの軽減につながります。
③ 入社後のオンボーディングがスムーズになる
入社時点で配属先が決まっていれば、内定期間中に職種に応じた情報提供や研修の準備が可能です。「入社するまで何をするかわからない」という学生の不安を解消できるため、入社後の立ち上がりもスムーズになるでしょう。
「規模が小さく、職種別にするほど採用人数が多くない」「そもそも職種が明確に分かれていない」といった場合、無理に全職種を分ける必要はありません。まずは特定の1〜2職種から導入してみるのも現実的な選択肢です。
例えば、エンジニア職や営業職など、比較的切り出しやすい職種から始めてみる形です。
重要なのは、制度をすべて変えることではなく、学生が入社後の業務を具体的にイメージできるようにすることです。仮に総合職採用の枠組みを維持する場合でも、選考段階で「具体的にどのような仕事を任せたいか」という期待値を伝えておくことで、ミスマッチのリスクは抑えられます。
短期インターンと長期インターンでは、目的がまったく異なります。
短期インターン(1日〜1週間程度)は、認知獲得・興味形成がメインです。会社説明会の延長として、業界理解や企業理解を深めてもらう場になります。
一方、長期インターン(1ヶ月以上、一般的には3ヶ月以上)は、「一緒に働く」ことが前提です。実務を通じて、学生側は「この会社で本当に働けるか」を判断し、企業側は「この学生と一緒に働きたいか」を見極めることができ、相互理解の場になります。
長期インターンが新卒採用において効果的な理由は、実際に一緒に働いてみることで初めて見えてくる要素が多いためです。
面接という限られた時間の中だけでは、スキルやカルチャーへの適合性を完全に見極めることは困難です。しかし、3ヶ月ほど実務を共にすれば、その学生がどのように考え、行動し、成長していくかといった特性が具体的に見えてきます。
これは学生側にとっても同様です。会社説明会や短期インターンでは見えにくい、実際の業務の難しさやチームのリアルな雰囲気を肌で感じ、自分に合う環境かどうかを判断する材料になります。
このプロセスは、採用を「企業と候補者による相互選択」と捉えるスクラム採用の考え方とも合致しています。長期インターンは、双方の理解を深めるための接点を最大化する、非常に有効な手段です。
ただし、長期インターンを導入すればうまくいく、というわけではありません。
失敗パターン①:「安価な労働力」として扱ってしまう
長期インターンは有給が一般的ですが、時給1,000〜1,500円程度で、正社員と同等の成果を求めるのは無理があります。育成コストをかける覚悟がないまま「戦力として期待」してしまうと、学生側の不満が溜まり、評判も悪化します。
「あの会社のインターンは雑用ばかりだった」という口コミは、SNSやクチコミサイトですぐに広まり、採用ブランディングとしてもマイナスです。
「長期インターンの指導は現場に任せる」という方針は、一見すると現場主導のスクラム採用のようにも見えますが、注意が必要です。
運営を完全に現場へ任せきりにしてしまうと、受け入れ部署によって学生の体験や扱いにばらつきが生じ、結果として採用につながらないケースが少なくありません。
人事はあくまで「採用プロセス全体の責任者」です。インターン期間中も学生の状況を把握し、評価基準を現場とすり合わせるなど、最終的な採用へつなげるための導線を設計しておく必要があります。
失敗パターン②:インターンと採用が「別の話」になっている
インターンは実施しているが、「インターン参加者を採用選考に乗せる」という設計がないと、インターンは単なる「社会貢献」や「認知施策」で終わってしまいます。
長期インターンを採用戦略に位置づけるなら、最初から「どんな学生を、どんな基準で評価し、どうやって採用につなげるか」を設計しておく必要があります。
ここからは、実際に長期インターン採用を設計するためのステップを解説します。「何から始めればいいかわからない」という人事担当の方は、このステップに沿って進めてみてください。
まず、どの職種で長期インターンを実施するかを決めます。
選ぶ基準は以下の3つです。
①現場が受け入れ可能か:インターン生を育成するリソースがある部署でないと、失敗パターン①②に陥りやすい
②学生に任せられる実務があるか:雑用ではなく、学生が成長実感を得られる仕事があるか
③新卒採用ニーズがあるか:インターン後に採用につなげるなら、その職種で新卒を採る計画が必要
よくあるのは、エンジニア、マーケティング、営業、カスタマーサクセスといった職種です。「まず1職種から始める」のがおすすめです。
次に、インターンの設計を言語化します。以下の項目を明確にしておきましょう。
項目 | 記載内容 |
|---|---|
目的 | なぜ長期インターンを実施するのか(採用目的、育成目的、認知目的など) |
ターゲット学生 | どんな学生に来てほしいか(学年、専攻、志向性、スキルレベル) |
期間・稼働 | 最低何ヶ月、週何日/何時間コミットしてもらうか |
業務内容 | 具体的に何をやってもらうか(最初の1ヶ月、3ヶ月後など段階的に) |
育成設計 | 誰がメンターになるか、どうフィードバックするか |
評価基準 | 何をもって「採用につなげたい人材」と判断するか |
採用への接続 | インターン終了後、どうやって採用選考に乗せるか |
設計書の作成にあたっては、現場と人事が連携して取り組むことが重要です。
現場にすべてを一任するわけでも、人事だけで決定するわけでもありません。双方が協力して設計を進めていく連携プロセスが、スクラム採用における基本となります。
長期インターンの難しさの一つは、「評価が定性的になりやすい」という点です。
一定期間一緒に働いた後、「なんとなく良かった」「うちに合いそう」という感覚で採用を決めてしまうと、再現性がありません。また、現場と人事で評価がズレることもあります。
そこで、事前に評価するタイミングを決め、評価基準を言語化しておくことをおすすめします。
評価の観点は、大きく3つに分けられます。
① スキルフィット(その職種で成果を出せるか)
業務に必要な基礎スキルを習得できたか
自走して成果を出せる兆しがあるか
長期的にこの職種でキャリアを築く意思があるか
② カルチャーフィット(この会社で働けるか)
チームメンバーとコミュニケーションが取れるか
会社のバリューに沿った行動ができるか
自分から情報を取りに行けるか
③ ポテンシャル(入社後に成長できるか)
フィードバックを受けて改善できるか
学習意欲があるか
困難に直面したときの対応力
これらの観点で、具体的にどういう行動が見られたら○/×かを、事前に現場と人事ですり合わせておきます。
長期インターン中、現場と人事の間で情報が断絶すると、採用判断がブレてしまいます。
そこで、以下のような仕組みをつくっておくことをおすすめします。
週次の定点観測:インターン生の様子を、メンターから人事に簡単に共有する場(5分のSlackでのテキスト報告や、『HERP Hire』での報告でもOK)
中間レビュー:インターン期間の折り返し時点で、現場・人事・学生の三者で振り返りを行う
評価シートの統一:現場が感覚で評価しないよう、共通の評価シートを用意する
最後に、インターン終了後にどのように採用選考へつなげるかを設計します。 主なパターンとして、以下の3つが考えられます。
パターンA:インターン経験者専用の早期選考ルート インターン参加者に対し、通常の新卒選考とは異なる早期選考のオファーを出す方法です。インターンを通じてすでにお互いの理解が進んでいるため、選考ステップを短縮するといった優遇措置が可能です。
パターンB:「インターン=選考」として設計 当初から「このインターンは選考を兼ねている」と明示し、インターン終了のタイミングで内定や合否を判断する方法です。目的が明確なため、学生側との認識のズレも起きにくくなります。
パターンC:インターン後に通常選考を案内 インターン終了後、希望者に対して通常の新卒選考への応募を案内する方法です。この場合、インターンでの活動実績を選考時の評価に加味するのが一般的でしょう。
どのパターンを採用するかは企業の方針次第ですが、重要なのは「インターンでの評価がその後の採用にどう影響するのか」を、事前に学生へ伝えておくことです。こうしたプロセスの透明性を確保することが、結果として学生からの信頼につながるはずです。
長期インターンの募集に使える主要媒体には、以下のようなものがあります。
媒体名 | 特徴 | 登録学生数 | 料金目安 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|---|
Wantedly | ビジョン・カルチャー重視のマッチング。掲載し放題。スカウト機能あり | 350万人以上(学生以外含む) | 月額4〜15万円程度 | カルチャーフィットを重視したいベンチャー・スタートアップ |
ゼロワンインターン | 長期インターン特化。3ヶ月以上勤務で「社長の推薦状」がもらえる仕組み | 非公開 | 成果報酬型 | 就活直結のインターンを設計したい企業 |
Infraインターン | 長期インターン関連のSEO上位。スカウト機能あり | 約8.7万人 | 2ヶ月20万円〜 | 幅広い業界・職種で募集したい企業 |
キャリアバイト | 登録学生数が多く、上位校比率が高い | 約14万人 | 要問い合わせ | 採用コンサルティングも受けたい企業 |
Renew | キャリア逆算型のマッチング。厳選求人 | 累計2,500名以上 | 要問い合わせ | 質の高い学生をピンポイントで採用したい企業 |
UT-Board | ハイクラスの大学生をターゲット層とした長期インターンシップの求人サイト | 非公開 | 成果報酬型 | ハイクラスの学生のみ利用できるサービスのため、優秀な人材を確保したい企業 |
各媒体で登録している学生層や強みが異なるため、自社の採用ターゲットに合わせて選ぶ必要があります。
媒体を選ぶ際は、以下の3つの軸で検討するといいでしょう。
① ターゲット学生の属性(志向性、専攻、エリア)
まずは、採用ターゲットとなる学生の属性や希望条件を具体的に整理しましょう。
エンジニア志望かビジネス職志望かといった職種の違いはもちろん、居住地が首都圏か地方か、あるいはフルリモート対応が可能かといった働き方の条件も重要な要素です。これらの要件と照らし合わせ、自社の求める学生層が多く登録している媒体を選定する必要があります。
② 自社の採用リソース(運用工数)
スカウト機能を十分に活用しようとすれば、相応の工数がかかります。
単に求人を掲載して応募を待つスタイルなのか、それともターゲットに対して能動的にスカウトを送るスタイルなのか。自社の採用担当者が割けるリソースを考慮した上で、無理なく運用を継続できる媒体を選定することが大切です。
③ 職種との相性
Wantedlyはエンジニアやデザイナーの採用に強い傾向があります。ゼロワンインターンはビジネス系職種の掲載が充実しています。自社の募集職種と媒体の強みが合っているかを確認しましょう。
媒体を選んだ後、成果を出すためのポイントは3つあります。
①求人票の書き方:「職種別であること」を明確に訴求する
「長期インターン募集」だけでは、学生側は何をするかわかりません。「マーケティング職」「エンジニア職」「営業職」など、職種を明示し、具体的な業務内容を書きましょう。可能であれば、インターン終了後のキャリアパス(そのまま新卒入社できるのか、など)も明記するとよいでしょう。
②応募後のスピード対応
学生は複数の企業に同時に応募していることが一般的です。応募から返信までに1週間かかると、その間に他社で選考が進み、辞退されることもあります。応募があったら48時間以内、できれば24時間以内に返信するのが望ましいです。
③現場社員を巻き込んだ選考設計
人事だけで面接を完結させず、配属予定の現場社員にも面接に入ってもらいましょう。学生にとっては「実際に一緒に働く人」と話せる機会になりますし、現場側も「自分のチームに入る人を選んでいる」という当事者意識を持てます。
採用活動の早期化が進んでいますが、単に「他社より早く内定を出す」ことだけを競っても、期待する成果は得にくいかもしれません。学生側の納得感がなければ内定辞退のリスクが高まりますし、入社後のミスマッチは早期離職の原因にもなりかねないからです。
重要になってくるのは、「早い段階で接点を持ち、じっくりと関係を築く」という視点です。
職種別採用によって「具体的な業務内容」を提示し、長期インターンを通じて「実際に一緒に働く」体験を提供するプロセスを経ることで、学生と企業の双方が「この人と一緒に働きたい」という確信を持ちやすくなります。
これは、私たちが提唱する「スクラム採用」の考え方を、新卒採用の現場に適用することでもあります。人事だけで完結させず、現場メンバーを巻き込みながら相互理解を深めていく上で、長期インターンは非常に有効な手段となります。
まずは特定の1職種からなど、小さな規模から始めてみてはいかがでしょうか。「入社後の業務イメージを具体化する」「実際に働く機会を作る」という2点を意識するだけでも、採用の質は大きく変わってくるはずです。
HERPでは、長期インターンの設計からシステムを活用した運用まで、一貫したサポートを行っています。自社での導入についてご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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