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資金調達インタビュー


難易度が高い人材採用のカギとは? 17.8億円調達のテックタッチ代表が明かす「強い組織」の作り方

投稿日:2023/4/19

更新日:2025/12/15

難易度が高い人材採用のカギとは? 17.8億円調達のテックタッチ代表が明かす「強い組織」の作り方

直近で資金調達を実施したスタートアップの、採用・人事に関する取り組みにフォーカスする本連載。急成長中の企業は、どのような“組織の成長痛”を経験し、いかにして乗り越えてきたのでしょうか。

今回伺ったのは、ノーコードのガイド・ナビゲーションツール『テックタッチ』を開発・提供するテックタッチ株式会社。2023年1月11日にシリーズBで総額17.8億円を調達したことでも話題になりました。

創業から5年を迎えた同社では、組織の成長に合わせた体制変更や、難易度の高いハイレイヤー人材の採用を実現したそうです。なぜテックタッチは、組織を柔軟に変化させながら採用を加速し、成長し続けることができたのでしょうか。創業者であり代表取締役の井無田仲さんにお話を聞きました。

井無田 仲/テックタッチ株式会社/代表取締役
慶應義塾大学法学部、コロンビア大学MBA卒。新生銀行、ドイツ証券などで投資銀行業務に従事、上場企業の資金調達/M&A案件を数多く手掛ける。その後ユナイテッド社に入社し、アプリ事業責任者、米国子会社代表としてアプリサービスのグロース/スケールを経験。フリーランスを経て、2018年3月にテックタッチを共同創業。

1.「SaaSの肝は人」資金調達で採用を強化

ーー本日はよろしくお願いします。まずはテックタッチ株式会社について教えてください。

私たちは「テックの力を最大化する」をミッションに、DXプラットフォーム『テックタッチ』 を開発・運営しています。

ユニークな点としては、この事業ありきではなく>「面白い仕事ができる会社を作りたい」と“起業ありき”でスタートした会社だということ。私が考える「面白い仕事」とは、仲間と共に挑戦し続けられる環境と、世の中にインパクトを起こせることが必須条件です。

この「世の中へのインパクト」を踏まえて設計したプロダクトが『テックタッチ』です。

今、テクノロジーはものすごいスピードで進化していますが、残念ながら日本を始めとしたアジア全体はITリテラシーが必ずしも高くなく、デジタル後進国だと言われることもしばしば。せっかく最先端のテクノロジーが生まれても、その恩恵を享受できない人が多いわけです。

テックタッチでは、このような「ITリテラシーによるハンデ」をなくして、皆が最先端テクノロジーをまんべんなく享受できる世界を作る。それこそが世の中にインパクトを与える仕事だと考えました。

ーー具体的にはどのような機能を持つプロダクトなのでしょうか。

『テックタッチ』は、ユーザーが十分に使いこなせていないシステムにナビゲーションを表示させて、利活用を促進していくプロダクトです。

▲多様な操作ガイドでゴールまでのナビゲーションを設置したり、ノーコードでコンテンツを作成できたりする『テックタッチ』

例えばSalesforceのように多機能なシステムは、使いこなすまでのハードルが高くて現場では活用しきれないケースが多々あります。そこに『テックタッチ』を導入することで、あたかも隣に人がいるかのように画面上でナビゲーションしてくれるんです。どんな複雑なシステムでも、ITの担当者やエンジニアではない人にも分かりやすく簡単に教えてあげられる、それが私たちのソリューションです。

また『テックタッチ』をシステム教育ツールとしてだけではなく、「ずっと使い続けるガイド」として使っているユーザーも多いんですよ。そのためノーコードでガイドコンテンツを作成したり、利用状況をクイックに確認・分析できるアナリティクス機能なども追加し、改善を続けています。

▲2022年9月には、システムの利用状況を可視化する『テックタッチ アナリティクス』をリリース

ーー分析や運用も含めて、ITに知見がない人でもいろいろなシステムを簡単に使えるようになるツールということですね。

はい。ニーズはとても高いので、今ではナショナルクライアントを始めとした大手企業、官公庁や自治体、SaaS企業を中心に導入いただいています。次の3年以内にエンドユーザー1,000万人導入を目指しているところです。

ーー今回の資金調達でユーザー数も加速しそうですね。資金調達の背景や用途についても教えてください。

詳しくは私のnoteにも書きましたが、資金使途のメインは「人」です。将来的な海外進出や新規プロダクトの開発も見据えながら、採用を強化したいと考えています。事業の成長は、いかに多くの優秀な人が事業を推進していくかにかかっていますからね。

具体的には、現在約80名のメンバーを半年以内には100名規模にしたいと考えています。

ーー人材を強化するポジションは?

まずは責任を持って意思決定をするプロダクトチームの経営ポジションを強化したいです。そして長期的なリサーチや戦略を描きながら形にしていく経営企画のポジション、もちろんセールスやCSの強い人材も募集しています。それらのプロダクトチームのリソース配分や海外戦略・新プロダクト開発も見据えた生産性の上げ方などが、会社の今後のテーマになってくると思いますね。

2.フラット組織の限界を迎え、構造改革へ

ーー次にテックタッチの人事や組織について、現状や課題があれば伺いたいです。

もともとエンジニアが多い組織だったこともあり、これまではいわゆる「ティール組織」のような階層構造がないフラットな組織体制でした。私も無駄な上下関係が好きではないので、メンバーがフラットな関係性で働けるのは理想的な世界だと思っていたのです。

しかしビジネス側は3年程前から、プロダクト側は1年程前から、マネージャーを置く「ピラミッド型組織」に移行することを決めました。これは社員数が増える中で、メンバーごとに得意分野のばらつきや業務の範囲の異なりが顕著になってきたからです。同時に、重要な意思決定が経営陣に集中し過ぎてしまうこともありました。

それなら戦略として「管理する役割」を設けた方がいいよね、と。社内では冗談半分で「Go to ピラミッド」と呼んでいて、役割としてのマネージャーがいる組織を作ることにしたんです。

特にこの1年くらいで本格的に取り組んでいるのですが、管理の役割を設けることで徐々に開発がうまく回るようになりました。組織の変更はもっと早く始めても良かったなと思うほどです。

ーーフラットな組織のまま意思決定の権限移譲をするのではなく、根本的に組織の構造を変えることにしたのはなぜですか?

フラットな組織に挑戦し続ける道は理論上、確かに成り立ちえます。が、大多数の人がピラミッド型組織に慣れている現状からすると、教育コストも莫大にかかってしまうし、ティール的な運用コストも相当にかかってしまう。スタートアップではそのコストを賄う余裕がないんですよね。

また、「フラットな組織」は手段であり、目的であるはずがない。楽しく仕事ができることが目的なので、組織としてはピラミッド的でも、そこに位置する人に上下関係なく対等であればそれで十分だと思っています。

加えて、SaaSというプロダクトの特性上、僕たちのビジネスはバリューチェーンが長い。今後事業を拡大するためにも、マーケ、I/S、F/S、CS、プロダクト、各ポジションに責任者を立てて幅広く改善を行うことが重要になってくると考えました。

ちなみに、SaaSビジネスは「VPはマーケ、セールス、CSの順に強化する」とSaaStrのJason Lemkinも言っていますが、私たちは反対の「CS、セールス、マーケの順で強化」したんです。

ーーなぜセオリーとは逆の順番にしたのでしょうか。

一つはエンタープライズビジネスの構造上の問題もあります。市場に潜在的な顧客数が少ないので、PMFしていない時に焼畑的にマーケ&セールスで案件獲得して売上を伸ばしても利益を先食いしてるだけで意味がないし、解約されたり、不具合が出たりしたらレピュテーションリスクも大きい。

また、テックタッチという僕たちのプロダクトにカスタマーサクセスが不可欠、という点も大きかったと思います。お客様にアカウントをお渡しするだけではうまく利活用してくれず、しっかりとカスタマーサクセスチームがデリバリーして初めて価値が最大化するプロダクトの特性があり、PMFそのものにカスタマーサクセスが不可欠なのです。

セールスの責任者は外資系SaaSから採用したりと、各ポジションの難易度もかなり高かったと思います。

3.難易度の高い採用を実現した「自分ごと化」促す仕組み

ーーマネジメント層や外資系SaaSのセールスなど、難易度の高い採用を実現できたのはなぜですか。採用の工夫や取り組みを教えてください。

一つ目は待遇面の工夫です。初期メンバーには会社の「普通株」を譲渡していたり、最近入社したメンバーにも他社の数倍規模のストックオプション(SO)を付与したりしています。

スタートアップのインセンティブ設計はSOが一般的で、普通株は通常なら創業者たちが保有しているもの。しかしメンバーが人生の大切な数年間をこの事業に捧げるのなら、創業者と変わらない持分を渡すべきだと考えました。人数が増えてきてからはSOに移行しましたが、こちらもメンバーに出来る限り多く還元されるように設定をしています。

もう一つの工夫はベーシックですが、キャリアパスと私たちが提供できるチャレンジの提示です。候補者の方が何をやりたいのかをヒアリングしながら、どんなチャレンジができるのかを擦り合わせるようにしています。

ーー仰るとおり「チャレンジできる環境の提示」はスタートアップの採用活動ではベーシックかと思います。そのような中でも、候補者が貴社を選ぶ理由は何だと思いますか。

先ほどもお話した通り、テックタッチは「面白い仕事ができる会社を作りたい」と思って起業しました。全てがそのバリューに起因するので、チャレンジする環境や仲間たちの価値観、代表である私のスタンスにも一貫性が保たれていると思います。

さらに皆が株や高いSOを持ってることで、仕事が「自分ごと」になりやすいので、強いカルチャーが自然と作られているんですよ。

こういった経営陣のスタンス、バリューやカルチャーなどは、表面上だけで取り繕っても頭の良い人にはバレてしまうものです。それらを嘘偽りなく開示することが、私たちへの信用に繋がるのではないかと思っています。

ちなみにマネジメントレイヤーになればなるほど、優秀で経験もあり、挑戦に飢えています。そう言った人たちに「経営」に絡むチャンスを提供できるのがスタートアップの採用における最大の強みです。強い人にきてもらうためであれば喜んで僕がやっていた領域をお渡ししています(笑)

4.カルチャーマッチを支える“真心営業”な採用活動

ーー「テックタッチの魅力」を伝えるために、採用チームはどのように動いているのでしょうか。

私たちの採用は「真心営業」に近いものがあります。現在採用チームは4名体制で、選考の初期段階から丁寧に会社の情報開示をしているんですよ。特に候補者の方が、私たちをしっかり理解した上で入社してくれるための情報は、嘘偽りなく全て伝えることを重視しています。

特徴的なこととして、オンラインの「採用ミートアップ」を毎週開催していることです。Zoomのブレイクアウトルームを使って、候補者の方々と社内メンバー10名くらいでコミュニケーションを取ります。

社内メンバーは立候補制で、所属する部署もさまざま。ミートアップに選考要素は一切ないので、いろいろな視点から「テックタッチってこういう会社なんだ」と知ってもらうことを目的としています。

ーーメンバーが立候補制。ここでも貴社のカルチャーが生きていますね。

ええ。テックタッチではもともと「ワーキングチーム」と言って、部署横断で会社の組織に関することに提言する、有志チームを作る取り組みがあります。

例えば有効なフィードバックの仕方を考えるチーム、カルチャーフィットを重視する採用プロセスを考えるチーム、お互いの知見を共有するワーキングチームなども生まれています。 誰かが「こういうワーキングチームを作ろう」と手を挙げて結成されるので、どの立場のメンバーでも「仕事の自分ごと化」に繋がるとても良い取り組みだと思います。

また、普段の仕事や採用活動でも「事業の成長に対して、皆が責任を持てる仕組み」ができるように意識しています。

そのおかげで今回「フラットからピラミッド型の組織に変更しよう」となった時も、メンバーはとても協力的でした。彼らはオーナーシップを持って働いているので、全員がすでに組織の課題に気付いていて「何かを変えなければ」と考えていたからです。

そのほか、隔週で共同創業者2人が考えていることを共有するラジオをしたり、月次の定例でこれからの展望を共有したり、経営陣からもメンバーへの誠実な情報開示を心掛けています。

ーーさらに各人がオーナーシップを持てるようになりそうな取り組みですね。最後に、今後の会社の展望について教えてください。

世の中のほとんどの人が「このシステムは使いづらいな」と思った経験があるはず。それをサポートする『テックタッチ』が使われるフィールドはとにかく大きいわけです。

つまり「世の中の全てのシステムを変えていく」くらいの意気込みで仕事ができる。それってすごく面白いと思いませんか。
私たちがそのような世界を実現するためには、やはり「人」が必要不可欠です。とはいえ大量採用をするのではなく、数十人の優秀な人で成り立つ「筋肉質な集団」でありたいですね。

ゆくゆくはテックタッチを卒業した人が多方面で活躍する「人材輩出企業」と呼ばれるくらい、優秀な人材が集まってチャレンジを続けられる会社にしたいと強く思っています。

5.まとめ

代表の井無田さんの「面白い仕事(=仲間と共に世の中にインパクトを与える仕事にチャレンジ)ができる会社を作りたい」という想いからスタートしたテックタッチ。

当事者意識を持ちながら「面白い仕事」に取り組めるさまざまな仕組みと、経営陣を始めとした社内のブレない価値観を持つことで、同社ならではの強いカルチャーを作り上げました。それらは難易度の高い人材の採用成功にも繋がっています。

どのような仕事も「自分ごと化」すると楽しくなるもの。同社の「メンバー全員がオーナーシップを持っている強いチーム」の事例は、急成長中の組織だけではなく、スクラム採用を取り入れたいチームや、メンバーの協力が欠かせないプロジェクトの推進にも参考になるのではないでしょうか。
>>テックタッチの採用サイトはこちら

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