
投稿日:2023/4/27
更新日:2025/12/15
事業の成長や組織拡大に伴い、新たな人事課題にぶつかるスタートアップは多いものです。では直近で資金調達を実施し、組織を急拡大させるフェーズの企業では、どのような課題に向き合っているのでしょうか。
そこで今回取り上げるのは、2017年の創業以来、ミレニアル世代の女性向けキャリアスクール「SHElikes(シーライクス)」を運営し、右肩上がりに成長を続けているSHE株式会社。 2022年10月には、シリーズBで総額約18億円の資金調達を実施したことでも話題になりました。
資金調達の前後では、事業の成長を加速する組織を作るために、採用活動の見直しを計ったという同社。特に会社の潮目を変えるような「インパクト人材」の採用に注力したと言います。
では具体的にどのような課題に直面し、解決に向かっていったのでしょうか。SHE株式会社 取締役 / CMO・COO 五島 淳さん、採用グループ マネージャー 永田 翔さんにお話を聞きました。
五島 淳/SHE株式会社 取締役 / CMO・COO
立命館大学情報理工学部を卒業後、電通に入社。幅広いマーケティング/クリエーティブ関連業務を担当。電通デジタルの立ち上げ期の参画等を経て、2019年にSHE株式会社にジョイン。SHElikesのブランディング・マーケティング・PR・事業グロース等全般を担当し、2020年より現職。
永田 翔/SHE株式会社 採用グループ マネージャー
大学卒業後、大手人材企業の営業からキャリアをスタート。後にLoco Partnersで人事制度策定や採用を経験した後、2020年にスタートアップのBeer and Techに1人目人事としてジョイン。人事責任者として採用・組織・労務を幅広く担当。2022年2月に副業として携わっていたSHE株式会社に入社し、全社の採用全般を担当。
——本日はよろしくお願いします。まずは今回の資金調達の背景について教えてください。
五島:SHEはミレニアル世代の女性向けキャリアスクール「SHElikes」など、スクール運営型の事業を主軸に成長してきました。 今後はさらに多くの方にSHEのサービスを使ってもらうために、既存のスクール型ではなく“プロダクト型”の事業を開発するというのが、今回シリーズBの資金調達を行った主な背景です。
具体的には、『「学ぶ」と「働く」が循環するキャリアプラットフォーム』となるようなプロダクトを開発し、SHEの次なる事業戦略の柱としていきます。

今、社会全体で人材の流動性を高める動きがあります。そのような時代には、スキルを身に付けるための「学ぶ」と、スキルを生かして「働く」を循環させて初めて、理想のキャリアが実現できると私たちは考えているんです。
ただ学習するだけでは仕事には結びつきませんし、かと言って既存の転職プラットフォームには育成の仕組みが存在しません。 そこでSHEがこれまで培ってきた、女性のスキルアップやキャリア支援サービスの強みを活かして、理想のキャリアや生き方を叶えられるプロダクトを開発していきます。
——調達した資金の主な用途は?
五島:資金の主な用途は、事業にインパクトを与えてくれる人材の採用です。
プロダクト開発に特化した組織を新たに立ち上げたので、プロダクトマネージャー、テックリード、など、事業サイドからプロダクトを推進できる仲間を増やしたいと考えています。
——そのために採用を担当しているのが、永田さんということですね。
永田:そうですね。採用グループは私以外に頼りになるメンバーが2名おりますので、一緒に採用活動を進めています。そして、採用に関しては、役員はじめ全社員がかなり協力的です。全員がカジュアル面談からクロージングまでフルコミットしてもらっています。

五島:組織図としては、事業部単位でユニット制を導入しています。
例えばコーポレートの事業部にHRや経営企画のユニットがあったり、新規ユーザー獲得を行うグロース事業部の中にマーケティングや事業推進ユニットが入っていたりします。
最近では、事業の次の目になるような新規事業を進めるユニットをまとめた「シード事業部」、顧客体験や開発、PdMなどのユニットをまとめた「プロダクト事業部」を立ち上げました。
——そのような体制を取っているのはなぜですか?
五島:当社はプロダクトを作る際に、顧客体験をとても重要視しています。事業部制を採用することで、開発・デザイン・PdMなどが連携してプロダクトを見ることができ、さまざまな視点から顧客体験の最適化を図れると考えているからです。
とはいえまだまだ、SHEのビジネスモデルに合った組織体制を模索している最中ではあります。半期に一度は見直しをかけるなど、ベストな体制になるようにチャレンジを続けているところですね。
——なるほど。その他、資金調達前に抱えていた人事や組織の課題について教えてください。
五島:組織の課題でいうと、社員が15名を超えてきたあたりから、採用のミスマッチが生まれることが度々ありました。それが組織にハレーションを起こしてしまい、事業作りなどの本質的な仕事に集中できなくなってしまいました。
それもそのはずで、その頃はまだ私たちが求める人物像や採用基準などが整備できていませんでした。改めてSHEの採用を定義し直すなど、徐々に課題を減らしていきました。
この時に採用ミスマッチを経験したおかげで「会社にとって採用は本当に大事なこと」だと全社で再認識できたので、今思うとSHEの成長にとって良いきっかけではありましたね。

——今回の資金調達のリリースでは「インパクト人材」の不足が課題とも発信されていましたが、こちらに関してはいかがですか?
永田:良い悪いではなく、あくまで全体のバランスのお話となりますが、今のSHEは調和重視型のメンバーが多い組織です。(実は私も調和重視型です)
それ自体はとても誇らしいことで素敵ではあるのですが、これからはSHEらしさを基盤にしつつも「攻め」に転じていくフェーズ。 スピーディーに意思決定を行って高い目標に挑んでいける方、あえて当てはめるならば「結果・創造」型の方は、これからのSHEでぜひ仲間になっていただきたいと考えました。
今後大きな進化をしようとしているSHEに必要なのは、しなやかでありつつも強い意志を持って、コトを前に進めることができる方。そのような方を「インパクト人材」と表現いたしました。
ただ、SHEにはワークライフダイバシティという人事ポリシーがあることもしっかりとお伝えしたいです。SHEは、違いを認め合う強く優しい組織です。
年齢・性別・国籍・学歴は関係ありません。大切なことは、お互いを受容し、違いを強さに変え、チームで生み出すチャレンジや価値です。
「インパクト人材」という言葉でお伝えはしていますが、あくまで表現となります。調和重視の方も結果重視の方も全員でこれからのSHEの歴史を創る挑戦をしていきます。
——インパクト人材の採用を進めるにあたって、どのような課題がありましたか。
永田:SHEのサービスの特性上、女性ユーザーの認知を獲得したり、カスタマーに近い層の母集団形成は本当にありがたいことにうまくいっています。
しかし、例えば男性との接点や、さらに事業にこれまでにない変化と前進を与えるインパクト人材とはなかなか接点が持ちづらいことに課題がありました。
選考以前の「SHEと出会うまで」の「認知の転換」が伸び代でした。もちろんSHEのカスタマーに近い価値観の人の中にも優秀で素敵な方はたくさんいるのですが、SHEのサービスが“好きなだけ”ではどうしても実業務とのギャップが生まれてしまいます。
そこでスタートアップとして泥臭く、ビジネスの面白さを感じながら働けるような「SHEの本質的な部分」を発信し、興味を持ってくれる方と出会えるように工夫をしました。
例えばリリースの打ち出しを細かく変更したり、メディア露出を増やしたり、エージェントさんとの連携を強化するなどトライを重ねました。
特に今回の資金調達を起点として、男性の入社比率に変化がありました。これまでの採用活動においては、圧倒的に女性の方の応募や入社が多く、男性は3割程度でした。
しかし男性応募者・入社者が急増し、23年3月末時点では入社予定者も含めて約60%が男性となりました。多様性溢れるしなやかな組織へこれからも挑戦していきます。
——インパクト人材へ認知獲得の施策を行った他に、工夫したことを教えてください。
永田:インパクト人材と接点が持てるようになった後は、承諾率が低いことが次なる課題でした。そこで実践したのが、選考フローや面談などの対応を、一人一人の候補者に合わせて設計することです。
以前まで、選考ではある程度決まったフォーマットでSHEの魅力を伝えていました。しかし候補者サイドからすると、転職先に求めているものは人によって違うはず。自分が入社したらどんなチャレンジが待っているかをモチベーションにする人もいるし、事業の伸び代にワクワクを感じる方もいます。
そこで、候補者が何を求めているのかをキャッチアップしながら、個別のプロセスを踏んでもらうようにしました。 座談会やランチ・ディナー、体験入社、ワークサンプル、クローズで行っている社内のミートアップへの案内など会社で取り組んでいます。
特にクロージング戦略においては、SHEとしてどんな機会を提供できるのか?期待していることは?などをフォーマットを決めず、候補者の方々に合わせて完全オリジナルで役員やマネージャーから資料を作成しプレゼンをしてもらうようにしています。 未来を互いに共有し、未来の先を一緒に考えることを大切にしていますね。
一人一人に合わせた選考を行うことで、内定承諾率はFY2022上期(4-9月)69%→FY2022下期(10-3月)96%まで大幅に改善をすることができました。

——具体的には、どのように個別プロセスを設計するのでしょうか?
永田:まずは選考初期の段階で、その人が転職において何を大事にしているのか、どのような企業さまを受けているのかなどのアンケートを取ります。
その結果をもとに、人事が役員や面接担当に申し送りをしたり、面接の前に現場面談をはさむなど選考フローをカスタマイズしたりしています。
またアンケートの結果は、選考を経て変化することもあります。そのため、最終面接前には必ず人事面談を実施して、常に候補者の最新の情報を取得するようにしていました。
最新の情報をもとに、人事が面接官に「この方には、次にこういう話を伝えてもらうと良さそうです」などと共有することで、候補者には適切なタイミングで、必要な情報をお伝えできるようになったと思います。
永田:選考は一人一人に合わせてカスタマイズしていますが、社内のメンバーの 採用に対する認識に関しては統一フォーマット(採用・カルチャーdeck)を作っています。
おかげでメンバー全員が「インパクト」をベースにファクトを用いて会社説明ができるようになりました。これも内定承諾率を上げる有効な打ち手の一つになったと思います。
永田:全社採用の体制が整ったのは大きいですね。おかげで選考の途中でメンバーとの座談会を実施して、現場の臨場感を醸成するといったこともできるようになりました。本当に感謝しています。
このような細かい選考の設計に関しては、人事と役員の間で週1の定例MTGを設けたり、Slack上で専用チャンネルでクイックにやりとりをしたりとスピードも意識しました。 候補者の評価に関することはHERP Hire上にストックして面接官同士で共有するなど、さまざまな情報を元に常に細かいチューニング を続けています。
——施策の効果はいかがでしたか?
永田:定量での成果としては、採用人数に大きな成果が出ましたね。 資金調達前のFY2022上期(4-9月)では11名の採用数だったのですが、資金調達後のFY2022下期(10-3月)では、25名の素敵な方々がSHEへのジョインを決めていただけました。非常に大きな変化でした。
定性的な効果としては、これまで会えなかったような方々からの自然応募や面接がとても増えたように感じています。 面談をした方からも「女性向けのキャリアスクールだと思っていましたが、違ったのですね。とてもワクワクしました。」と何度も言っていただけるようになりました。
——インパクト人材の採用を進めていて、新たに出てきた課題や今後の展望などあれば教えてください。
五島:今はオンボーディング整備に組織チームと連動し、注力しています。これまでと異なる環境下でもブレずに高い成果を出してもらいたいと思っていることが注力している理由となります。
既存の組織にうまく融合できるようにチームでサポートしつつ、インパクト人材への期待値を正しく伝え続けて、能力を最大限に発揮できる環境を作っているところです。
またオンボーディングでは、新メンバーが“前職の勝ちパターン”に囚われ過ぎないようにしてもらっています。
今のSHEのフェーズで大事にしたい「基準」を整理しインストールし、新メンバー・既存メンバー交えて意見交換をするプロセスをとりながら、SHEのカルチャーの中で経験を活かしながら成果を出してもらうことに重点を置いています。

——もともとのスキルとSHEのカルチャーを融合させて、最大化できるようなオンボーディングを徹底しているんですね。
五島:そうですね。それらをオンボーディング期間の2カ月間で身に付けてほしいので、個人の理解度を促すためのチェックリストを組織チームが作ってくれました。
リストを埋める前に、例えば「この動画を視聴する」「社内で業務の関わりがある5人とコミュニケーションを取る」などのタスクを実践してもらいます。
タスクが終わると、SHEの事業やバリュー、個人のOKRなどが理解できるように設計しているので、上長やメンターのサポートを受けながら進めていきます。
そして最終的には、自分自身でSHEで働くことへの理解度が深まったかをチェックしてもらうといった仕組みです。
このチェックリストは最近始めた施策なので、今はPDCAを回しながらより良い形に仕上げているところですね。
——サポートをするメンターとは、どのようなポジションの方なのでしょうか。
五島:オンボーディングにおけるメンターは、自走を目指すサポート役として同じユニット内の業務やミッションが近いメンバーが担っています。
上長だけではなく、同じメンバーの立場であるメンターをサポート役に付けることで、組織内のキャッチアップがとてもスムーズになると感じますね。
——最後に、会社としての展望を教えて下さい。
五島:大前提、短期ではSHElikesの事業成長への集中と向き合いをメインとしていくことが最優先事項です。その上で、冒頭にお話したプロダクト型組織への転換というのはあくまで中期のスコープ。最終的に私たちが目指しているのは、社会にあるさまざまな不均衡を解決することです。
SHEはコミュニティーとテクノロジーを駆使して熱狂を生み出し、ムーブメントを作っていくことが得意な組織。今後はその強みを活かして、女性のキャリアに限らず、例えば政治や医療、金融などインパクトの大きな領域を次々と変革していきたいですね。
誤解を恐れずに言うと、いうならば令和版のDeNAやリクルートのような形で、新しい事業やブランドをどんどん生み出す組織が理想的。 自社ではそのような組織を「インパクトスタートアップ」と定義していて、常に社会課題を解決し続け、多くの収益を出し、市場に対して新たな挑戦を続けられる会社でありたいと考えています。

シリーズBで約18億円の資金調達を実施し、「インパクト人材」と定義するハイレイヤーの採用を強化し始めたSHE。
認知獲得のためのマーケティングや、候補者一人一人に合わせた選考の設計、丁寧なオンボーディングなど、細やかかつスピード感を持って施策のPDCAを回していく姿勢が特徴的でした。
このような取り組みができるのは、採用担当の永田さんや、五島さんを始めとする役員陣が、採用や人事課題にフルコミットしているからこそ。
また現場メンバーが協力できる仕組みが構築されていることも、SHEの順調な組織拡大を後押ししていると感じられました。
全社でチャレンジを続けるSHEの姿勢や取り組みは、急成長する全てのスタートアップにも応用できるのではないでしょうか。 SHEの採用サイトはこちら
※所属部署・役職は2023年4月当時のものです

株式会社UPSIDER
応募数10倍&年間50名採用。急拡大組織の成長痛に立ち向かうUPSIDERのHERP活用事例

キャディ株式会社
「組織拡大期でも採用基準は下げない」HERP Hireへの切替導入で“こだわり採用”を叶えたキャディの事例

株式会社Kyash
タイムラインでのやり取りの積み重ねを候補者のアトラクトに活用!HERP Hireが支える株式会社Kyashのスクラム採用

株式会社iCARE
「1年50名採用目標」を半年で達成。株式会社iCAREが既存カルチャーを生かしてスクラム採用体制を確立できた理由

弥生株式会社
ATSの乗り換えで分析の土台ができ、最適な採用活動ができるようになった弥生の導入事例

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エンジニアはエンジニアの眼で見て採る!採用活動をプロダクトとして捉えるBASEの「スクラム採用」とは

ルームクリップ株式会社
全職種でワークサンプルを実施!候補者目線を考え尽くしたRoomClipの採用プロセスとは
デジタル人材採用を加速する採用管理システム HERP Hire

求人媒体からの応募情報の自動取り込み、Slack/Chatwork連携による現場メンバーへのスピーディな情報共有により、現場メンバーが積極的に採用に参画できる「スクラム採用」の実現をサポート。
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書類選考・面接・評価など、一連の採用プロセスをAIが支援。
候補者との対話や意思決定により時間をかけられるようにします。
デジタル人材採用を加速するタレントプールシステム HERP Nurture
複数の求人媒体からの応募情報の自動取り込み、SlackやChatworkとの連携による現場メンバーへのスピーディな情報共有。