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COO仕事の流儀


COO仕事の流儀 SmartHR 倉橋 隆文 経営のプロとして持続的に成長し続けるチームをつくる

投稿日:2021/1/12

更新日:2023/7/7

COO仕事の流儀 SmartHR 倉橋 隆文 経営のプロとして持続的に成長し続けるチームをつくる

急成長を遂げるベンチャー企業には必ずCEOを支えるCxO陣がいる。しかし、彼らの活躍や魅力は外部からは十分にはわからない。特にCOOというポジションは範囲が広く、役割も曖昧に見えがち。

本連載ではCOOというポジションで最前線を走る方々へのインタビューを通じて、COOというポジションの意味合い・役割・必要な要素などを丸裸にしていきたい。

第2回のゲストは、SmartHRの倉橋 隆文さん。キャリア観からSmartHRのCOOとして強く意識していることを語ってもらいました。

登場人物

ゲスト:株式会社SmartHR取締役・COO 倉橋 隆文

取締役 兼 COO(最高執行責任者)。2008年、外資系コンサルティングファームマッキンゼー&カンパニーに入社し、大手クライアントの経営課題解決に従事。その後、ハーバード・ビジネススクールにてMBAを取得。2012年より楽天株式会社にて社長室や海外子会社社長を務め、事業成長を推進。2017年7月、SmartHRに参画し現職に就任。

  インタビュアー:株式会社HERP取締役COO 徳永 遼

京都大学法学部卒業後、2012年に株式会社ビービットに入社。2017年3月よりHERPに参画。ビジネス、開発、コーポレートなんでもやる。本連載ではCOOの方々にひたすら質問して深掘りをしていく役回り。

経営のプロでありたい。コンサル・MBAから一転、事業会社の現場へ。

徳永:倉橋さんは新卒でマッキンゼー&カンパニー、その後ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得、楽天に転職し社長室や海外子会社社長などのポジションを歴任、2017年7月からSmartHRと、ピカピカの経歴ですよね。キャリアの軸となっているような考え方みたいなものがあれば教えていただけないでしょうか。

倉橋:MBA留学中からプロの経営者になりたい思いが強かったです。MBA留学時に、欧米と比べて日本の存在感は想像よりも小さいことに気づいたこと、欧米の企業をみている時に強い経営者が企業を変えていけることを学んだのが背景です。

倉橋:加えてずっとチームスポーツをしてきた経験から、チーム一丸となって何かを成し遂げることが純粋に好きなんですよね。仕事においてもそんな瞬間をたくさんつくっていきたいということが経営者としてのキャリア構築にもつながっています。

徳永:なるほど、MBA留学後初めて経営者としての経験を積むという意味で楽天での経験はどうでしたか?

倉橋:入社をしてみたら実際はうまくいかないことだらけで、失敗もたくさんしました。最後の半年間で楽天で新規事業に携わっていたのですが、それがとにかく楽しかった。大変なことがいっぱいあったんですが、チームでそのカオスな状態を乗り越えチームや事業が大きくなっていくことを心から楽しんでいました。

徳永:そこからSmartHRでのキャリアにつながっていくんですね。SmartHRでのCOOとしての役割について教えてください。

倉橋:COO候補として入社をしましたが、SmartHRはかなり合理的でフラットな会社なので、実力が認められるまで役職は何もありませんでした。名刺の肩書き欄は空白でスタート。いわゆるパラシュート人事がない。これはSmartHRの好きなところです。

徳永:なるほど…!そして、入社してから1年は現場から上流まで幅広く携わられていたんですね。

倉橋:はい。入社して最初に任されていた領域は事業企画や事業開発のような領域と、マーケティングの領域です。入って2-3ヶ月でSmartHRの料金体系の変更をしたり、メンバーと一緒にLP改善したりなどの取り組みもありました。企画するだけでなく実行まで担当していたので、そこで料金変更に伴う顧客との直接のコミュニケーションなども担っていました。

徳永:楽天は社長室や子会社社長などのキャリアだったということで、そのご経験からまた大きな変化だったと思いますが、すんなり適応されたのでしょうか?

倉橋:そうですね、辛いとは一切思いませんでした。というのも、SmartHRって、いい人が多いんですよ。今となっては手前味噌ですが、本当にいい人が多い。 正直自分の経歴は威圧感があると思っています笑。でも、CEOの宮田が「この次に入ってくる人はこのポジションの候補です」と話して目線をそろえておいてくれて、メンバーもみんな気持ちよく受け入れてくれた。本当に感謝しています。 また、そもそもプロ経営者でありたいと自分で決めてキャリア選択をしてきたこともあり、今まで成長痛はあれど、辛いなと思うことはなかったですね。

徳永:SmartHRの組織風土が垣間見えるとともに、倉橋さんの謙虚さ・ストイックさが滲み出るお言葉ですね。

COOの役割は、事業を”理想的なスピード”で成長させ続けること

徳永:その後COOに就任されるわけですが、倉橋さんが考えられるCOOの役割はどのようなものでしょうか?

倉橋事業を“理想的なスピードで成長させ続ける”のがCOOの役割だと捉えています。 スタートアップは世の中の課題を解決することを生業にするので、どんどん大きく成長していくことが必要なわけですが、もっと大事なのは成長が“持続する”ことだと思うんです。

徳永:一時的な成長をさせるのはCOOの役割ではないということですね。

倉橋:はい。やろうと思えば来年を犠牲にして今年めちゃくちゃ成長するということもできますが、組織や顧客との関係性を壊すことは絶対にやってはいけない。 短期の急成長を狙いつつ来年、再来年5年後の成長を犠牲にしない、まさに“理想的なスピード”で事業を成長させるのがCOOだと思っています。

徳永:その二律背反に向き合うのがCOOの仕事。難易度が高いですよね…。

倉橋:そうですね。これを実現するには、一緒に働いているメンバーがレベルアップしていく土壌を作ることが不可欠です。 5-10年良い業績をつくり続けるためには人の成長が必須ですし、事業成長し続ける会社でないと、メンバーにとっても良い機会を提供できない。相互依存しあう関係です。

徳永:COOに就任されてから組織のマネジメントというのはどのように取り組んできたんでしょうか。

倉橋:最初は人数が少なく、特に責任者が不在の領域では現場仕事もしていたわけですが、徐々に特定領域の専門家が増えてきて任せられるようになってからは、マネージャー不在の領域でマネージャーとして動くこととCOOとして全体最適をとることの2つの役割を担っていました。

徳永:全体最適というのはどういうイメージですか?

倉橋:部署同士で利害関係が対立するようなシーンで、単体部署では適切な意思決定ができないものへの対応です。具体的には各部署の目標のバランスを整える、部署を跨いだオペレーションを整える、イレギュラーの線引きなどを行っています。

徳永:当時マネージャーが増えていく中で組織課題などありましたでしょうか。

倉橋:当時100名を超えたくらいの組織で、それまでは全員の状況を一定度把握できていたのですが、100名を越えると直接把握は難しくなります。楽天での失敗経験を活かしながら、乗り越えてきました。

徳永:楽天での失敗経験というと…?

倉橋:たくさんありすぎてここでは紹介しきれませんが笑、一つ代表的なのは、アメリカで子会社社長をしていた頃の失敗ですね。自分が打ち出した新戦略の発表直後に辞表を突きつけられたことがあります。それも、一人ではなく何人も。

徳永:なんと…!!

倉橋:より多くの責任を持つようになると、方針発表の機会などが増えますが、それぞれの立場にとってそれはどう聞こえるかを考えないと、こういった失敗につながってしまいますよね。 SmartHRでは初めてマネジメントをやる人も多いので必ず1on1を設けていたのですが、必ずこの話はするようにしていました。マネジメントは最初は絶対に失敗します、失敗しても改善したら大丈夫ですと伝えていましたね。

徳永:倉橋さんに自分の失敗を開示されたら、すごく心強い気がします。 その後はどんな仕事へ移っていったのでしょうか?

倉橋:その後は完全に1つの部署を任せられるVP(Vice President)を採用できたので、この先5-10年で成長するためにはどうするかといった抽象的なお題が増えていきました。 その中で私は1年の時間軸、3年の時間軸、5-10年の時間軸の3つで事業を捉えて意思決定をしていきます。

徳永: 各施策について3つの観点で評価をするイメージですか?

倉橋:1年の結果のためにやるべきことは、現場から勝手に上がってくるんです。それぞれの担当が顧客やマーケットに真っ直ぐに向き合っているので、どんどん出てくる。 なので3年という意味ではそれらを見た時に、これは3年後を犠牲にしてしまうからやめようというネガティブチェックをしています。

徳永:なるほど…!

倉橋:1さらに5-10年の時間軸は、どこまでリソースをさくかがポイントになるので、これは経営陣で議論して決めるようにしています。足元の業績につながらないことにどこまで投資するかは難しい問いなので、一人で決めるわけではなく、慎重に議論しています。

徳永:不確実性が高い今の世の中で、3年という時間軸でのネガティブチェックはすごくちょうどいい気がします。自分にとっても参考になりました。

会社以上のスピードで自らも成長をし続ける。それができなくなった時には潔く引く覚悟

徳永:最後に、COOとして日々心掛けていること・意識していることはありますか?

倉橋:まずは自分には現場感がないと自己認識を持って、現場と一緒に意思決定をすることでしょうか。

徳永:現場感を持っていると断言してもよいご経験な気がしますが…。

倉橋:昔はありとあらゆることが手に取るように分かったし、分かるように努力してきました。でも今は、各業務の現場において、例えば顧客とどういう対話があるかなどは断片的にしか知ることができていません。 だから、自分のポジションは俯瞰ができていることがメリットであり、各領域の答えは現場が持っていることを意識しながら意思決定をするようにしています。

徳永:そう断言してくれるCOO、メンバーにとってはすごく心強いと思います。

倉橋:もう一つは、常に初めての経験をし続けて、自分が会社以上のスピードで成長を実現し続けることでしょうか。

徳永:COO自ら、会社より早く成長する、と。

倉橋:今顧客に提供できている価値はきちんと継続しながら、新しい価値をつくって、まだ見ぬ顧客に提供して…と繰り返すことで事業が成長し、従業員も成長する正のスパイラルをつくれます。 そのトリガーとして、自分の成長は常に意識したいと思っています。もし成長が追いつかなくなったら、そこが引き際だとお互いに言い合おうとCEOの宮田とも話しています。

徳永:好きな会社だからこそしがみつきたくなりそうですが、潔く引くぞと決めているわけですね。

倉橋:はい。決めています。 でも、COOの成長の機会って実は多くないんです。 CEOほど外部と接するわけではないので外部からの刺激は手放しでは入ってこないし、フィードバックも自ら求めないと、なかなかメンバーからは得られないと思います。 なので、貪欲にそれは求め続けたいと思っています。

徳永:目の前のことを頑張っているだけでは、十分な成長の機会は得られないということですね。

倉橋:はい、そう思っています。でも、最近それが十分にできていたかな…。 最近、入社された方から萎縮されてしまうことがあるんですよね。そうさせてしまう自分の立ち居振る舞いは反省ですね。フィードバックがもらいにくい環境をつくってしまっていたかもしれない。

徳永:そのお言葉から、倉橋さんがかなりストイックにCOOとして仕事をされているのがよく伝わってきます。

倉橋:自分はやっぱりチームプレイが好きなんです。みんなで頑張って何かを成し遂げた瞬間が何よりの幸せだと思っています。だから、このSmartHRという大好きなチームで、できるだけ長くプレイしたい。 このチームはすごい勢いで成長しているので、自分の立場に求められる役割もすごく大きくなっていくのですが、食らいついていけるだけ食らいついていきたいと思っています。

徳永:倉橋さんのストイックさに、僕も負けじと成長し続けたいと身が引き締まる思いです。 お話を聞かせてくださり、ありがとうございました!

COO仕事の流儀第二弾。
キラキラしたキャリアとは裏腹に組織・チーム・コミュニケーションを非常に大事にされるスタンス、常に謙虚な姿勢などの倉橋さんの人間性が現れ、インタビュー前の印象がガラッと変わる1時間強でした。(SmartHRという会社の素敵さも言葉の端々から伝わってきました…!) 持続的な成長をつくることができるかという問いを自分自身今後も突き詰めていきます。 CxOとして会社経営に携わる皆さん、そういったキャリアを目指される方々、ぜひお読みください!

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