
投稿日:2020/9/15
更新日:2023/7/4
はじめまして、筆者は株式会社HERPの河井と申します。
筆者はもともと経営コンサルティング業界の出身で、多岐にわたる企業の戦略策定や業務改善を支援していました。また途中、事業会社での経営企画職社員としての経験もあるのですが、どのような業界・状況であれ常々直面していた問題が「人材」でした。検討した新規事業の実行の主体者に誰を充てるか、必要になる人材をどのように獲得するか、という議論がほぼ常に交わされ、そこに企業・個人・そして社会にまたがる課題を感じた私は、結果採用業界に身を投じ、弊社へと至っております。
特に直近では、リモートワークの進展などにより大手企業におけるDXの必要性が一層叫ばれるようになり、その推進の肝となるデジタル人材をいかに確保するかが企業にとっての大きな経営課題となっていると感じます。
また、採用のあり方も急速に変化している中で(筆者もフルオンラインで弊社の採用を受け、内定に至りました)、大手企業がいかにして上記に取り組むべきかについて僭越ながら記載しました。
DXに関する類似の言説は昨今多く発信されているため、ここでは「DXの推進」と、そのために必要となる「デジタル人材採用の推進」の双方に有効な考え方についてお話したいと思います。What:目的の明確化と、How:小さな実験を繰り返す、の2点です。

DXのバズワード化とともに繰り返し語られていますが、「自社におけるDXの目的は何か」を定めることはやはり重要です。社内の業務効率化なのか、既存事業のグロースなのか、0→1の新規事業の創出なのか、はたまた全社的な意思決定へのデータの活用なのか、などによって、必要になるデータも人材も、社内外を交えてどのような体制で推進するのかも全く異なります。
逆に、目的からの逆算ではなく、現状手元にあるデータを起点にできることに着手してしまうと、何らかのアウトプットは出たがビジネス上ほとんど意味のないものや、現状から少しは良くなったがかけたコストに全く見合わないものとなってしまい、ただでさえ期待値の高いDXへの社内の幻滅をもたらしがちです。
「トランスフォーム」=変革には、現状からの非連続性と確かな成果が求められます。そのためには例えば、なすべきことや目的のために必要なデータを定義し、蓄積する・ないし部分的には購入する、というようなトップダウン型の意思決定が自ずと必要となるのです。
市場からのフィードバックを素早く入手するサイクルを回すことも重要です。現代社会では、時間をかければインターネットで、お金をかければ多種多様なサービスで、企業や個人があらゆる情報を入手できてしまいます。しかし、自社・自身のアクションに対する反応は、その背景・経過を外部に公開しない限り、自社・自分たちだけにしか知り得ない情報になります。
DXの文脈では、この反応が収集・定量化・分析しやすいという観点から特に有効であり、そのような情報を蓄積し独自の知見としていくことが企業・事業の優位性につながります。情報格差を作りにくい時代だからこそ、情報格差がもたらすインパクトは大きいと言えるでしょう。
この観点は社内の業務効率化の観点でも同じく重要です。自社社員や関係する取引先を「オペレーションのユーザー」と捉え、彼らの行動やその変化をいかに可視化し蓄積していくかが、業務効率化のためのツールや仕組みが幅広く存在する現状で正しい選択をするための分かれ道になるでしょう。 大前提となる方向性や目的を定めた後は、机上の比較検討に無闇に時間を使いすぎず、市場と対話をし続けることが重要となります。
ここまでDXの全体について記載してきましたが、上記のWhatやHowのポイントは、デジタル人材の採用についても欠かせないポイントになります。つまり、What:人材要件の明確化と、How:採用市場での実験、です。
採用一般に関連する話ですが、その人材要件の定義・明確化が採用成果の創出に不可欠です。組織がこれまで有していない専門性を有しているからこそ、組織がこれまで自社が目指している方向性に対し必要なスキルとその水準を言語化することで初めて、適切なチャネルと予算配分、および正確なジャッジが可能になり、またアトラクトやクロージングにどれほど社内リソースをかけるべきかを判断できます。
特にデジタル人材は、その専門性や関連する経験にこそ価値があるので、畑違いの業務では全く活躍できない・かつそのモチベーションも沸かないといった実態が容易に発生します。だからこそ、例えば求人票の段階から候補者がその企業で活躍できるイメージを具体的に想起できるかが重要であり、その求人票の具体性は明確な要件定義なしには実装不可能です。
また、人材要件が曖昧だったばかりに大きなミスマッチが発生し、採用したもののその社員の活躍の場がなく、DXの取り組み自体も頓挫してしまい関連人材が大量退職、その企業の採用ブランドの毀損につながったという事例は非常に多く聞きます。このような根本的な失敗から立ち直るのはかなり難しく、しばらくの間デジタル人材採用の集客が機能しなくなったという話も珍しくありません。
採用市場からのフィードバックをいかに自社に蓄積し知見に昇華していくかが、激化するデジタル人材の採用競争での優位性獲得の鍵となります。昨今の人材の専門性とともに採用のチャネルも細分化し、また採用の手法も拡がりました。
しかし、各企業ごとにターゲットからの認知やイメージ、待遇、カルチャーは異なるので、打つべき採用施策も異なります。当たり前のように聞こえてしまうかもしれませんが、新しい採用施策を実施しなければその施策によりターゲット人材が自社に集客できるかはわかりませんし、選考の回数を積み重ねない限り自社の見極め基準や人材要件の質は上がっていきません。
例えば、デジタル人材採用で活用されることの多いダイレクトリクルーティングにおいても、スカウト文面を、誰から、どのタイミングで、どの内容で打つべきか、など大量の改善ポイントが存在します。同様に、有効な施策として挙げられることが多いリファラル採用にしても、どのような資料を用意すべきか、紹介後の最初の接点を誰が担いどのような話をすべきかなど、実際の市場で検証しない限り改善が進まない論点は多く存在します。
もちろん、新規人員の採用は企業にとっても大きな決断ですし、候補者にとっては人生に大きく関わる意思決定となります。内定出しにおける失敗は基本容易に受け入れるべきものではありませんが、認知・集客および選考中の体験などの細かな改善は積極的に実施していくべきです。

では、上記を実現するためには何が必要なのでしょうか?結論を申し上げると、弊社ではそれを「いかに現場が主体的に採用に関われるか」だと考えています。
技術や開発手法の進化により、人材の専門性の細分化は日々進んでいます。また、組織が置かれている外部環境も刻々と変化する中、「今まさに」必要な人材要件を明確に定義し、市場からのフィードバックを適切に咀嚼した上で最適な修正を加えていくことは、その事業やプロジェクトに最前線で取り組み、ターゲットとしている人材のバックグラウンドにより理解のある現場メンバーでないと難しいのではないでしょうか。
例えば、どのようなメディアでターゲットは情報収集をしているのか、今どのような観点に彼/彼女らは興味があるのか、特定テクノロジー・技術に対しどの程度の経験・成果があれば求めている水準に達していると言えるのか、それを判断するためにはどのような選考を実施すればいいのか、といった観点をとってみても、人事だけでの検討には限界があると考えられます。
さらに言えば、小さな実験は重要である一方で大きな失敗は中長期的なブランド毀損につながる
リスクがあると上記で述べましたが、取り返しのつかないミスマッチは、現場のニーズとの乖離やミスジャッジによって引き起こされることがほとんどです。また、現場としてもなぜその人が採用されたかが腹落ちできないと、万が一のときの育成・転換の動機づけもされづらくなります。このようなリスクコントロールにも現場のより積極的な関与は欠かせないのです。
結局は、DXも採用もそれそのものが目的ではなく、あくまでも事業のための手段にすぎません。しかし、社内分業や役割のすみ分けなどにより概して双方は自己目的化しがちで、それが進むと往々にして立ち直りの難しい失敗をもたらします。大目的を明確化し常に忘れないこと、環境変化や市場からの反応を機敏に捉え修正・改善していくこと、このどちらにとっても、現場が主体性を発揮できる体制・仕組みとその納得感の醸成が根本的に重要といえるでしょう。

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