
投稿日:2026/6/11
更新日:2026/6/11
多くの企業が採用難に直面する昨今、外部の採用チャネルとして転職エージェント(人材紹介会社)を活用する企業が増えています。しかし、多くの取引先を抱えるエージェントが、裏側でどのように紹介先を選別しているのか、そのリアルが語られることは滅多にありません。
今回は、エージェント支援のプロフェッショナルである株式会社AGENT SUCCESS 代表取締役の野村さんをお迎えし、エージェントが「本気で応援したくなる会社」と、逆に「紹介が止まってしまう会社」の決定的な違いについて、HERPの上石がリアルに切り込みます。

上石:多くの企業がエージェントを活用、あるいは検討されていますが 、エージェント側は日々多くの求人を扱う中で、どのような優先順位で候補者に企業を推薦しているのでしょうか?やはり、成果報酬(手数料率)が高い企業が優先されやすいといったことはあるのでしょうか?

野村さん:手数料の高さはもちろん推薦を後押しする一つの起爆剤にはなりますが 、それ以上に「人事担当者の方との関係性が良いこと」や「面接に繋がりやすく、最終面接までの選考イメージがついて内定が出やすいこと」の方が、実は圧倒的に比重が高かったりします。エージェントが候補者と面談した際、頭の中でパッと想起する紹介候補の企業は、実は大体10社くらいしかありません。

上石:膨大な取引先がある中で、その「ファーストチョイスの10社」に残り続けるためには、どのようなアプローチが有効ですか?

野村さん:一番は、直近1週間以内などに何らかの接点を持っていることです。「新しいポジションが出たのでぜひご協力をお願いします」という個別のアナウンスや、エージェント向けの合同説明会を開いて情報を届けてくれている会社は、圧倒的に想起されやすいですね。
ちなみに、企業によっては「定例ミーティング」を設けているケースもありますが、私はあまり必要ないと考えています。採用状況やニーズは日々変わるため、定例にしてしまうと「あえて話す内容を無理に見つけに行く動き」になってしまいがちです。それよりも、状況が変わったスポットの瞬間にクイックに情報を伝えてもらう方が、エージェントとしては動きやすいですね。

上石:採用を強化したい企業側のアプローチとして、「手数料率を上げる」ことと「自社の情報をより詳しく教える」ことなどがあると思いますが 、エージェントの動きやすさとしてはどちらが効果的でしょうか?

野村さん:世間の平均値(約35%)から40%や50%に手数料を引き上げることは、確かに「スカウトを頑張ろう」と思わせる一時的な起爆剤にはなります。しかし、単に手数料を上げただけだと、その瞬間の熱量は高くなっても、中長期的な目線で「紹介しやすくなるか」というと必ずしもそうではなくて、基本的には一過性のものに過ぎません。
じゃあどうしたらいいのかというと、やはり手数料を上げるだけで終わらせず、前述した通りの「紹介しやすくなるような情報連携」を徹底することが結局は一番大事になってきます。状況が変わった瞬間にクイックに情報を届けたり、選考の解像度を上げてもらったりする土台があって初めて、手数料の引き上げという起爆剤も中長期的な効果を発揮すると思います。
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上石:エージェントと契約はしたものの、「この企業には紹介しづらいな」「紹介をやめよう」と感じてしまう会社には、具体的にどのような特徴がありますか?

野村さん:大きく分けて2つの特徴があります。
1つ目は、人事担当者の方が接しづらい会社です。エージェントを対等なパートナーではなく「業者」として扱い、無駄に高圧的な態度を取る方や、他では言えないような自社の情報を隠そうとする会社は非常に紹介しづらいです。これでは、面談で求職者から質問されてもエージェント側が何も答えられなくなってしまい、面談した方のことを考えても推薦をためらう原因になります。
2つ目は、不採用になった理由が分からない会社です。書類選考で要件に満たなかった等のNG自体は当然ありますが、その具体的な理由を聞いても答えてくれない会社は、次の紹介を控えようと思ってしまいます。
特に紹介ストップの決定打になるのは、選考が順調に進んで最終の社長面接まで行き、これまではぜひ採用したい!と前のめりに進んでいたにもかかわらず、社長面接で急に落ちてしまうケースです。その理由を人事に尋ねても、「社長がNGと言っているから」としか説明されず、納得のいく理由が開示されない場合、「もうこの会社に紹介するのはやめよう」と思ってしまいます。

上石:企業側が選考結果や自社の状況を包み隠さず話してくれないと、エージェント側も不信感を抱き、結果的に推薦が止まってしまうのですね。逆に、「この会社はぜひ心から応援したい!」と思える会社にはどんな特徴がありますか?

野村さん:「会社全体で採用に対して向き合っている会社」ですね。人事の方だけが頑張るのではなく、現場のマネージャーや社長も「採用は大事」という共通認識を持っています。そのため、エージェントへの情報開示も積極的ですし、訪問した際にも現場のマネージャーや社長自ら、会社の状況や採用したい背景を説明してくれます。
こうした会社は、候補者を紹介した後も、そして入社した後も、きっと気持ちよく働けて活躍してもらえるだろうなという具体的なイメージが湧くため、エージェントとしても非常に推薦がしやすいです。

上石:現在エージェントからの推薦がうまく上がってこないと悩んでいる企業が、まず実践すべき具体的なコミュニケーションの工夫やテクニックはありますか?

野村さん:まず伝えてほしいのは、「なぜそのポジションを募集しているのか」という背景情報です。増員なのか、欠員が出てしまったのか、あるいは資金調達をしてこれから事業を伸ばすフェーズなのか、といった背景が明確になるだけで、エージェントは求職者に提案しやすくなります。
また、多くの企業がやりがちなのが、ATS(採用管理システム)から新着求人を機械的に送るだけで終わってしまうパターンです。実はエージェントの元には、システム経由の新着求人が1日に100件以上届いており、基本的には見逃されてしまいます。
そのため、ATSとの紐付けだけでなく、Slackやメッセンジャーなどの別のコミュニケーションツールを活用し、「このポジションを大募集しています!」とクイックにやり取りできる関係を築いておくことが、想起してもらうための大きなポイントになります。

上石:現場や経営陣の巻き込みという点では、どのような取り組みが効果的でしょうか?

野村さん:採用企業側で社長を招いたエージェント向けの会社説明会を開く事例などもありますが、社長から直接今後の目指したいビジョンやカルチャー、人柄に触れてもらうことは非常に有効です。
さらに、採用が非常にうまくいっている会社に共通しているのは、最初に現場や役員メンバーとの接点を設けることです。最初の打ち合わせの10分間だけでも構いません。「うちは今こういうビジョンを目指していて、こういう状況なので、ぜひ採用のお力添えをお願いします」と直接挨拶されるだけで、エージェント側は「この会社のために頑張ろう!」という気持ちになります。人事担当者だけでなく、実際に受け入れを担当する現場のメンバーを初期から巻き込める会社は本当に強いですね。

上石:最後に、エージェントの使い分けや選定基準、そして関係性に悩んでいる採用担当者の皆様へメッセージをお願いします。

野村さん:エージェントの選定に関して言えば、まずはファーストステップとして複数社と契約を結び、実際に話してみて相性を探るのが良いでしょう。全ての会社と等しくコミュニケーションを取り続けるのは大変ですので、管理部門特化・ビジネス特化・エンジニア特化といった「セグメント」と「過去の実績」を掛け合わせ、声掛けに対して反応が良いエージェントへ徐々に優先順位をつけていく形がおすすめです。
採用担当の皆様は、日々の入社手続きや人事労務、面接調整など本当に忙しい中で業務を回されています。なかなかエージェントとの打ち合わせの時間を取るのも難しいかもしれませんが、エージェント側も何社もの取引先を同時に抱えているというお互いの事情があります。
だからこそ、「エージェントとのやり取りも人と人との付き合いである」という原点を忘れず、ちょっとした一言でも声を掛け合えるフラットな関係性を築いていただきたいです。エージェントを単なる発注先や下請け業者として扱うのではなく、「採用成功を共に目指す、強力なパートナー」として捉えて接していただければ、きっと御社にとって最高のパートナーが見つかるはずです。
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